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思い溢れて

西海岸は革新と多様性の地域だが、それを支える好奇心と寛容性が滲み出ると、面白いワインが生まれる。

カリフォルニアのブルゴーニュ品種の生産者達は、常に優れた畑を求めている。けれど、何を以て優れた畑と言えるかは一概に言えない。それだけに、新しい可能性を追求したくなるのだろう。

そんなカリフォルニアの生産者達が、一時期、熱視線を送っていたのがオレゴン州だ。オレゴン州は、カリフォルニア州の隣にあり、ブルゴーニュ品種を中心に優れたワインを多く生産している。現地の生産者たちもその事に誇りを持っているようで、同地域のワインはNapaに代表されるカリフォルニア・ワインとは一線を画した味わいであることを、度々自認し、また主張している。

それだけに、オレゴンの作り手達のカリフォルニア・ワインへの関心は低いと言っても過言ではないが、その逆もまた然り、という訳ではない。反証の例として、最初に名前が挙がりそうなカリフォルニアの生産者はFaillaだろう。

FaillaはMarcassinのオーナーであるHelen Turely氏の元で修行し、Turleyのワインメーカーも務めたEhren Jordan氏のワイナリーだ。1998年に創業して以来、Pinot Noir, Chardonnay, Syrahを中心としたワインを多く生産している。

Ehren氏は好奇心旺盛なせいか、Sonomaを中心に優れた畑の果実を多く買い付け、様々なSingle Vineyard Designateのワインをリリースしている。

そんなFaillaのポートフォリオは、近年、オレゴンにまで及んでいる。優れた畑と聞けば、すぐに試したくなるのだろう。今回はWillamette ValleyにあるSeven Springs Vineyardの果実を使ったピノノワールを入手することができた。

オレゴンでも名高いSeven Springs Vineyardは、ブルゴーニュの生産者であるComte Lafon氏との共同プロジェクトでスタートしたEvening Land Vineyardsが所有する畑だ。Eola-Amity Hillsに位置している。ちなみに、現在同ワイナリーの醸造担当はDomaine de la CoteのSashi Moorman氏である。

香りは、紫蘇、梅干しから赤スグリ、腐葉土、ブルーベリー、ミルクティ、バラが中心。やや酸が先行するバランス。ピュアな味わい。アフターも美しい。カリフォルニアのピノ・ノワールとは異なる個性が表現されている、佳作なピノ・ノワールだ。

Ehren氏はよほど好適地探しに余念がないのだろう。カリフォルニアだけでも、以下の図の畑を手掛けている。これに加えて、オレゴンの可能性までも追求したいと思うに至ったのは、野心的というより、好奇心が溢れだしているせいではないか。


出典:Failla wines

本日のワイン:
Failla Seven Springs Vineyard Eola Amity hills Pinot Noir 2019
92+pts
https://www.faillawines.com

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