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ジンファンデルとカリフォルニア

Zinfandelには、カリフォルニア・ワインの魅力が詰まっている。

カリフォルニア・ワイン業界では、Historic Vineyard Societyの活動に見られるように、20世紀に施行された禁酒法以前に植樹された畑の保存活動が盛んになっている。カリフォルニアには様々な古樹を持つ畑があることもあり、同団体の活動は、近年、国際的に注目されている。そして、Zinfandelは、そうしたカリフォルニアの歴史ある畑において存在感のある品種と言って良い。

しかし、Zinfandelは、今も昔も、米国内を除けば人気のある品種とは言えない。国際的に生産地が広がらないことも相まって、一部のファン向けのワインとして珍重されているに過ぎない。ただ、そのお陰で優れたワインであっても穏当な価格で取引されており、消費者にとっては有り難い存在と言える。

日陰の道を歩いてきたZinfandelだが、生産者達はこの品種に地道かつ気楽に付き合ってきた。多様な表現が可能である品種なので、自分のやりたい事を表現したい生産者には魅力的な品種だったのだろう。加えて、フード・フレンドリーな品種であり、堅苦しいレストランで恭しく飲むワインよりも、日々の消費者の食卓に、手頃な価格で、しかし真摯なワインを届けたいならば、よくできた品種という訳だ。

そんな背景もあってか、Zinfandelの生産者達は、互いを競争相手というよりは同じクラブの仲間のように見ているフシがある。例えば、有名生産者として、Bedrock、Carlisle、Limerick Laneが挙げられるが、これら生産者は互いに自社畑の果実を融通しあっている。つまり、BedrockはCarlisle vineyard、Limerick Lane vineyardの果実からもワインを作っており、他の二生産者も同様である。

優れた畑は互いに分かち合い、同じ品種を愛する仲間として互いに切磋琢磨する。オープンマインドで前例に囚われず、未来を楽観的に作っていこうとする人達が作り出すワインは、実にカリフォルニア的だと思う。

今回、BedrockがCarlisle vineyardの果実から作るZinfandelを入手することができたので飲んでみることにした。カリフォルニアの畑にはグラン・クリュの設定はないが、私見で言えば、Carlisle vineyardはその一つに間違いなく入るだろう。

Bedrockはオーナー兼醸造家のMorgan Twain-Peterson氏とパートナーのChris Cottrel氏のプロジェクトだ。カリフォルニアの中でも古樹を持つ畑を中心に、Zinfandelを含む幅広い品種のワインをリリースしている。ちなみに、初リリースがリーマンショックの10日後だったこともあり、「ワインは誰にでも買える価格であるべき。」と考えているそうで、品質だけでなく価格でも優れたワイナリーだ。

なお、Sonoma生まれのMorgan氏は、RavenswoodやOnce & Futureを創業したJoel Peterson氏の息子であり、さらにMaster of Wineの資格を持つ醸造家でもある。近年、SNSやPodcastでの情報発信も盛んに行っており、今後のカリフォルニア・ワイン業界にとっては重要な人物になっていくのだろう。

ワインの色合いは紫に見えて、野苺、赤スグリ、バラを中心とした豊かな香り。透明感が際立つ。しっかりとした酸に支えられた骨格があり、洗練された印象。ややタニックだが、時間が解決するだろう。長く、満足のいくアフター。傑出したZinfandelと言って良い。

多様性と革新に満ちたカリフォルニアにふさわしい、品格と奥行きを備えたこのワインは、市場で極めて穏当な価格で取引されている。ただし、生産量には限りがあるため、一部の消費者の手に渡ってしまえば入手は困難だ。とはいえ、Zinfandelを愛する消費者が楽しむには十分な量だろうが。

本日のワイン:
Bedrock Carlisle Vineyard Russian River Valley Zinfandel 2019
95+pts
https://bedrockwineco.com


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