見出し画像

愛嬌のある人にはつい親しみを感じてしまうものだが、そんな人柄がワインに出ることもある。

カリフォルニアにおけるローヌ品種の草分けと言えば、Alban vineyardsを興したJohn Alban氏をおいて他にはない。同氏は、20代の誕生日にコンドリューの「安ワイン」と出会ったことで、後にローヌに渡ってワインを学び、カリフォルニアでローヌ品種の可能性を探求するパイオニアにまでなった。

生産者としても、Alban vineyardsはカリフォルニアの中で名実共に屈指のローヌ系品種のワイナリーと言って良い。一時期、Sine Qua Nonに果実を供給していた他、自身が作るワインもRobert Parker Jr.氏やJeb Dunnuck氏から極めて高い評価を得ている。

さらに、John氏はワイン造りだけでなく、米国でのローヌ品種の啓発活動にも力を入れている。ローヌ品種の祭典であるHospice du Rhoneの発起人でもある。かつて米国では南仏品種の知名度が低く、成功の見通しは不透明だったろうが、今や一大イベントとなるに至ったのは、同氏の貢献や人柄とは無縁ではないだろう。


ちなみに、幸運なAlban vineyardsの顧客は、そのリリース・レターから生産者の人柄を垣間見ることができる。まず、その文章の長さに驚く。しかも、ワインの解説はそこそこに、手紙の大半は冗談めかした調子で書かれたワインにまつわる思い出話やローヌ品種への憧憬で占められている。多弁なだけでなく、明るい人柄なのだろう。

そんなJohn氏が作るワインは文章以上に雄弁だ。例えば、自社畑から作られるヴィオニエは、カリフォルニアのトップレベルの白ワインの候補として常に名前が上がる。今回はこれを開けてみることにした。

レモン、杏、ラ・フランス、蜂蜜を中心に実に豊かな香り。ミネラリーで、かつ層を感じる味わい。果実味は凝縮感があるものの、それに負けない強い酸があることで抑制的な作りに感じられる。とても長く美しいアフター。

故Josh Raynolds氏はこのワインをレビューする際に、度々、トップレベルのコンドリューと比較したいと書いていたが、そう思いたくなるほど洗練されたワインだ。ただ、どこか飲み手を笑顔にさせてくれる愛嬌を感じる。

自身の原点とも言うべき品種だけに品質の向上にも余念がないのだろう。そのたゆまぬ努力が尽きることのない情熱に支えられていることは想像に難くないが、そうした過程さえ楽しそうに見えてしまうのは、生産者の人柄のおかげかもしれない。

本日のワイン:
Alban vineyards Edna valley Estate Viognier 2020
93+pts
https://www.albanvineyards.com


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?