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塩の真実-⑤役割(シンポーター)

 塩は生命維持に必要な物質です。それは何故でしょうか?

 まず、第一番目に言えることは、人間の体液は0.9%の食塩水であることです。人間だけでなくほとんど全ての脊椎動物の体液が0.9%の食塩水になっています(サメ等の軟体動物は2.0%程度)。これが偶然であるはずがありません。

 生命は太古の昔、約40億年前に原核生物(単細胞生物)から発生し、それから数十憶年という長い時間をかけて魚類、両性類、爬虫類、鳥類、哺乳類に進化し、最後に人間が登場したと言われています。生命の起源が海水中なので、動物の体液は塩分濃度を持つ必要があるのでしょう。つまり、塩分に生命を維持する仕組みがあるはずなのです。それは何なのでしょうか?

 人間は、60兆個の細胞で出来ていると言われます。分かりやすく言えば単細胞生物が60兆個集まっているようなものです。この細胞が日々随時連携しながら活動することで、生命が維持されています。

 また、人間には自己免疫力が備わっており、体内に侵入した病原体やがん細胞などの異常な細胞や異物を認識して殺滅し、体を病気から保護します。自己免疫力の基礎となるのも細胞です。細胞にはいろいろな種類・役割があり(一説には200種類)、免疫力を構築しているのです。    

典型的な動物細胞の模式図(ウィキペディアより転載)
(1)核小体(仁)、(2)細胞核、(3)リボソーム、(4)小胞、(5)粗面小胞体、(6)ゴルジ体、(7)微小管、(8)滑面小胞体、(9)ミトコンドリア、(10)液胞、(11)細胞質基質、(12)リソソーム、(13)中心体

 このように人間が活動する上での基礎が細胞の活動にある訳ですが、細胞の活動体液に体液の塩分濃度0.9%が大きく関与しているようです。

 細胞の構造は、細胞の大部分を占める細胞質の周りを、薄い細胞膜で覆われており、その細胞膜を必要な栄養分だけが通って、内部の細胞質に送る仕組みになっています。細胞膜に浸透圧を利用した仕組みがあり、毛細血管を通じて血液とともに送られて来た栄養分は、細胞膜を通じて細胞質に送られます

細胞膜の外の体液中には、塩分濃度0.9%のナトリウムイオンが存在しています。

 一方、細胞質内の体液は、塩分濃度(ナトリウムイオン濃度)が細胞外の1/10である約0.09%に保たれるようになっているのです。この数値には驚きですね。

 このため細胞外のナトリウムイオンには、常に細胞質内に入ろうとする浸透圧がかかっています。

 ※ちなみに細胞質内にはカリウムイオンが集められます。

 しかし、通常は細胞膜の入口は、ナトリウムイオンを通さないようになっています。入口の扉が閉じているのです。

 ところが、血液により糖やアミノ酸、ビタミン等の栄養分が細胞膜まで運ばれて来ると、周辺に塩分濃度0.9%で浮遊しているナトリウムイオンが入口の扉の『鍵』となって、細胞膜の扉が開く仕組みになっているのです。


シンポーターであるナトリウムイオンが細胞膜を通過して栄養分を運ぶイメージ


その結果、栄養分+ナトリウムイオンが細胞質内に入り込めるようになり、エネルギーとして生成される、という神秘的な仕組みなのです。驚きですね。

 つまり、ナトリウムイオンは栄養分を細胞質に運ぶという大変重要な役割を持っているのです。この役割のことをシンポーター(共輸送体)と呼びます。

 全ての動物の体液に塩分濃度が存在するのは、ナトリウムイオンがないと栄養分を全細胞に運べないため、細胞が活動出来ず生命が維持出来ないからです。塩が人にとって、動物にとって、如何に重要な物質なのか、これでお分かりいただけると思います。

人間の体液(細胞膜外)は、常に0.9%に塩分濃度を保たなければなりません。この状態でないとナトリウムイオンが正常なシンポーターの役目を果たしにくくなるのです。

 もちろん過剰な塩分の摂りすぎは善くないですが、摂り過ぎた場合は喉が渇き過剰な塩分を尿とともに排出する仕組みが人間には備わっていますので、あまり心配は必要ないと思います。

 しかし、塩分不足はもっとも恐ろしく、栄養分を体中に運べず生命の危機に陥る可能性があるのです。現代人は国が進めて来た間違った減塩施策のせいで、多くの人が塩不足状態であることを知るべきです。

 ただし、同じ塩でも岩塩には注意が必要です。岩塩は確かに美味しい種類もありますが、全ての岩塩が長い年月をかけて風化して出来たものです。そのためミネラルが豊富と謳った岩塩もあるようですが、風化して複合的な化合物となっている岩塩は、体内に入っても海塩のようにすぐに溶けてナトリウムイオンとなりにくい場合もあるようです。酷い場合は、溶けずに老廃物として体内に残り、全くシンポーターの役目を果たさない場合もあり得ります。

最も体内で溶けやすいのは、海塩の中でも非加熱の天日塩です。せんごう塩やイオン交換膜法で出来た塩のように、加熱して強引に結晶させた海塩は、天日で自然結晶化した天日塩よりも体内での溶けやすさが劣ると考えられます。私達が非加熱長期熟成天日塩™を勧める理由の一つはここにあります。

 最後までお読みいただきありがとうございました。次回に続きます。

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