《写真の保存修復を考えてみた vol.19》~写真の保存修復4~ by タケウチリョウコ
今日12月7日の誕生花は「カランコエ」です。花言葉は「幸福を告げる」「たくさんの小さな思い出」だそうです。
今年もあとわずか!一年を振り返ると、コロナに振り回された一年でもありましたが、楽しい思い出もあったな〜っと小さな幸せを感じます。
今年こそは飛行機に乗って帰省したいのですが…。オミクロン株の世界的な感染拡大にビビりまくっている今日この頃です。
こんにちは。タケウチリョウコです。
本日は、「写真の保存修復」について考えるシリーズの最後、「どのような処置が可能なのか?」について考えます。
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前回記事でご紹介した写真を例に、写真画像を少しでも長く見られるように保存するには、どうしたら良いでしょうか。
主な劣化は下記のものでした。
「化学的劣化」:黄変、退色
「物理的劣化」:欠損、擦れ、亀裂、剥離
「生物的劣化」:カビ
欠損や亀裂、擦れなどの物理的劣化はすでに情報が失われているため再現することができません。
(*保存修復の領域ではなく、復元やレプリカとして再現することはできますが…)
しかし黄変や退色は画像情報を完全に失っている訳ではないため、何が写っているのか読み解くことはできます。
そのため、ここでは画像情報の延命に着目して、「化学的劣化」に対する処置を考えていきたいと思います。
まず「化学的劣化」に有効な処置は保存環境を整えることです。
ゼラチン・シルバー・プリントは高温・多湿の環境下では非常に脆弱です。
そのため、出来る限り涼しく、湿度変化の少ない場所に保管するようにします。
ちなみにJIS K 7642「写真−写真印画の保存方法」では適切な保存環境を下記のように定めています。
○黒白写真及びカラー写真の温度・湿度の設定
JIS K 7642では保存条件に長期保存条件と中期保存条件を定めている。前者は永遠の価値をもつ記録情報の保存に適した条件とし、後者は最低10年の寿命の寿命を得るのに適した保存条件としている。
【中期保存】黒白写真およびカラー写真
・温度:最高温度25℃:任意の24時間当たりの温度の変動は±5℃以内、最高温度は規定の上限を超えないものとする。
・ 湿度:20〜50%RH :任意の24時間当たりの湿度の変動は、±10%RH以内とする。
【長期保存】黒白写真
・温度:最高温度18℃:任意の24時間当たりの温度の変動は±2℃以内、最高温度は規定の上限を超えないものとする。
・湿度:30〜50%RH:任意の24時間当たりの湿度の変動は、±5%RH以内とする。
家庭で保存・保管する場合、上記の条件を整えるのは難しいです。そのため温・湿度の変動が少ない場所&直射日光が当たらない場所が良いと考えます。
私の場合はガラス戸のある本棚に保管することにしました。
次に問題はカビです。出来れば除去したいのですが、根深く&カビの菌糸がある部分はすでに画像も失われているため、どうすることもできません。
漂白して茶色くなったカビの跡を消す方法もありますが、薬剤を使用する処置ですので今回はそこまで行わず、あくまで写真に大きな負担を与えない延命処置にしたいと思います。
そこで劣化範囲が拡大しないよう無水エタノールを使った予防処置を行いたいと思います。
また物理的な劣化である剥離は、こちらも劣化範囲が拡大しないよう生麩糊と和紙を使った補修を行うことにします。
以上の3点をふまえて、次回から実際の保存処置の方法や道具などに注目していきます。
とはいえ、年末・年度末で皆様もお忙しい日々をお過ごしではないでしょうか。
わたくしも仕事に育児に、慌ただしくなってしまい写真資料の処置に手が回らない状況です。
冬は低温&湿度が低いためカビの繁殖が少なく、放置していても大きな問題に繋がりづらいと思うのですが…?!これが春から秋にかけてのシーズンでしたら写真資料に大ダメージを与えます。
そこで!なかなか保存処置できない大ダメージを受けた写真資料を、どのように保管しておくべきか?をご紹介します。
①まず写真資料をよく観察する
②カビのある写真資料は他の資料と別置する
③写真資料一枚づつ、写真保存専用の材料を使用して収める
(中性紙で包み→透明の袋に入れる。または中性紙の封筒に入れる。)
④③の状態のものを数枚まとめて保存容器に入れる
劣化の著しい資料については、出来る限り環境を整え、処置する日まで待ってもらいましょう。
次回は上記でご紹介した写真保存用の包材について、もっと詳しく触れていきたいと思います。
またnoteでお会いしましょう。
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