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気象予報士と気象データアナリスト

気象データアナリスト登場

気象予報士の資格を取って以来、日本気象予報士会に入っております。先日、6月の総会に合わせて会員対象のアンケートがあって、私も回答したのですが、その際に気象予報士会の会員数が徐々に減ってきていることを知りました。
個人的にはスグダスなど気象データサービスの利用や、会員証があること(気象予報士の資格証って無いので地味に嬉しい)など、入会のメリットもちゃんとあるとは思っています…が、この点は一旦おいといて。

気象予報士会の会報『てんきすと』第135号(2022年5月号)に掲載された、気象庁のお知らせコーナーに気になる記事を見つけました。

気象データ利活用の現状
…(中略)…
 気象データの利活用の課題は2つあります。1つは、気象データをどのように事業に活用できるかがわからない、といった知識や経験の不足。もう1つは、気象データを利活用できる人材の不足です。
 気象庁ではこれらの課題解決のために、気象データのビジネス活用事例をオンラインセミナーなどを通して紹介したり、気象データを高度に利活用できる人材を確保するために「気象データアナリスト育成講座」認定制度を創設するなどの取組を進めています。

てんきすと第135号より抜粋

ついに気象予報士会の会報にも出てきました、『気象データアナリスト』。制度設計から講師まで関わっている私としても少し嬉しく思いました。

気象データアナリストとは、気象データの社会での利活用を推進するべく、気象データとビジネスデータの分析を通してビジネス創出や課題解決を行う人材の名称です。気象庁は気象データアナリスト人材を増やすべく、民間の教育訓練事業者が実施する講座に対し、要件を満たす場合に『気象データアナリスト育成講座』として認定を出す、などの活動を行なっています。

2022年6月現在、気象データアナリスト育成講座の認定を取得している講座は3つありますが、私はデータミックス社の『気象データアナリスト養成講座』に講師として参加しています。2021年10月に日本初の講座開講、そして2022年4月に第1期卒業生が3名誕生いたしました。
気象庁は『気象データアナリスト育成講座を卒業した人が気象データアナリストである』と定義しているので、この3名が日本初の「公認」気象データアナリストとなりました。おめでとうございます!

卒業生の皆様の今後のご活躍を期待しております。

気象予報士の現況アンケート

ところで、気象庁は2020年度に気象予報士の現況調査を実施しており、調査結果も気象庁ウェブサイトで公開されています。

この調査結果を見ると、気象予報士有資格者のうち気象予報の実務経験者は2割程度であり、また2013年度の調査結果から割合にほとんど変化がないことがわかります。しかもアンケート回答者数のうちの2割程度という結果ですので、気象予報士全体で見たらもっと低いと考えられます。

『令和2年度 気象予報士の現況に関する調査』より引用

超難関資格のわりに、その資格ならではの仕事をしている人が2割しかいないというのは驚きの結果です。

もちろん気象予報士の資格を取る方の中には、趣味や地域ボランティアで活用する意図を持った方も多数いらっしゃいますので、そもそも職業にする意志がないということもあります。
ただ職業・ビジネスに活用したいと希望するもその機会が得られない方や、職業・ビジネスにつながらず活用の場が少ないことに不満を持つ方も、一定数いらっしゃることがこのアンケート結果から浮き彫りになっています。

前述の気象予報士会の会員数にしても、気象予報士の有資格者は毎年増えているのに、気象予報士会の会員数が増えないどころか減っている要因として、「(国家資格の有資格者団体の割には)職業につなげる機能が弱い」ということがあるのではないでしょうか。

「気象予報士は食えない資格」とも言われる所以をここに見出すことができます。

気象予報士の新たなキャリアパスになるか

一方で、気象庁が行った別の調査結果『産業界における気象データの利活用状況に関する調査(令和元年度)』とともに産業界に目を向けますと、気象データを自社のビジネスに活用したいがその方法がわからず人材もいない、という課題を抱えていることがわかります。

ということは…
ビジネスでも活躍したい気象予報士と、気象データを活用したい企業とが、気象データアナリストという新たな職種を通してマッチングされるのではないか?
という仮説に思い至るわけです。

このあたり、もう少し詳細な内容について、2021年7月にIA戦略デザイン研究会に招待していただいた際に講演いたしました。以下にスライドを掲載いたしますので、よかったらご覧ください。(※1)

このスライドの最後の方で、『企業は人材不足で気象データの活用が進まないって言うけれど、じゃあ気象データアナリストが増えたら本当に気象データの活用が進んでビジネス課題解決につながるのか?』という問題提起をしました。

講演ではその解決策として、『気象データを使うとどれだけのビジネスインパクトがあるか、その効果の大きさ(気象の価値)を定量的に示すことができれば、意思決定者も気象データ活用に動き出すのではないか』という仮説を提示して、締め括りました。

これを気象予報士側、つまり人材側から見ると、もう一つの解決策が思い浮かびます。すなわち、新たなキャリアパスとして気象データアナリストを選択した気象予報士が、企業の課題解決のための気象データ活用プロジェクトを立ち上げ、意思決定者を説得し、率先して気象データ活用を進めて成果を出していく、という道筋です。

うまくいけば気象データアナリスト人材への需要が喚起され、気象予報士資格の社会的価値も高まり、また潜在的にあった気象データ利活用のニーズも発掘される(そして私の仕事も増える😅)という、正のフィードバックが働くことが期待できます。

気象データアナリスト育成講座を修了して各産業界で活躍される気象データアナリストに、そして気象予報士の活躍の場の広がりに、今後も注目したいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(※1) 
2013年度の気象予報士現況調査結果を基にスライドを作成しましたが、調査結果は2020年度の調査結果と大差ありません。

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