あの日、気圧された―― その実、こともなげにお店をあとにしたけれど、気圧されたのである。 4年ほどまえのあの日、私はひとり京都にいた。 京都のオフシーズンといわれる2月、ひもすがら狐雨のアンニュイな日で、二条城近くの交差点では、つかめそうでつかめない「低い虹」も認めた。 折しも、件のウイルスでまもなくゲートは封鎖されるといったところで、 外国人観光客が散見するも、ゆきがかり上移動を憚るムードを醸していた。 それでも日帰り京都を敢行したのには、それなりの理由があった。
気位の高いひとが得意ではない。 気位の高い器も、然り―― そっと、距離をおきたくなるのだ。 気位の高いそのひとの端々に、辻褄のあわない違和感をおぼえる。 気位の高いその器も、然り―― どうにも、承服しかねるのだ。 気位の高いひとほど一色を好む。 気位の高い器ほど、然り―― 枯淡な風でいてその実、かえって欲気が透けてみえるのだ。 気位の高いあのひとを憂う。 気位の高いあの器も、然り―― 迂闊にもだ。
晩夏という言葉がひとり歩きしているらしい。 その実、ニセ晩夏が行き場をなくしているらしい。 およそ晩夏とは思えぬ暑さなのである。 ――夢を見た。 幾重にも層をなすレジ袋の雲がどんどんと海に落ちてゆく。 淡い群青色の海は、たちまち真白い海に様変わりした。傍観者然としてレジ袋製のさざ波に浮かぶ私は、まもなく岸に打ち上げられてしまったのだ。 なぁんだ、「プラスチックフリー」な時流に押し戻されただけか―― 今夏、わが家の台所の片隅にはレジ袋が幾重にも折り重なっていた。 順番に、
計量カップの深淵に憧れる。 その実、台所の景観を彩るアイコニックなアイテムのひとつである。それゆえ、計量カップという道具選びには、こと慎重を期すべきだ。 至高の道具たちで日夜生活実験に勤しむ者にとって、台所はいわば研究室。実験器具然とした佇まいのテルモハウザー、私の最適解だ。
否、偏愛の所業である。 ── serious shopperよろしく、道具とは真剣に向き合う。 あれもこれもとアイテムを手に入れたいわけではない。 むしろその逆、Less is moreである。 実験には当然、失敗も失望もある。 あるいは、成功より失敗のほうが多いかもしれない。 心眼を大切に、日日研究はつづく…… THE ESSENTIALS普遍的で美しい。 汎用性があって、機能やデザインにむだがなく手入れが容易い。勝手のよい