暮らしメモ〜春分 いのちの芽吹く日に「たねや」に行く
風で草が擦れ、霰も混じる春分の日
滋賀県の「ラコリーナ近江八幡」を訪ねました。
この辺りは、数年前に行った
「ヴォーリス建築ツアー」以来です。
春分前夜、友人に星読みを教わりながら
生まれ生かされる日々の不思議を思い
明けて、種まきをするかの如く「たねや」に呼ばれるように訪れてしまうことに
内側は静かに溢れていきます。
ラコリーナの空間は素晴らしかった!
藁の混ざった漆喰の壁は
程よく落ち着いて何をも遮らず
草で覆われた屋根や
天辺から伸びる松や柿の木の佇まいは
建物が大地そのものであるような錯覚を覚えます。
内装は丁寧に丁寧に手仕事の跡が見え隠れします。
炭が散りばめられた天井
ステンドのような模様ガラス
それを支える真鍮のゆるいカーブ
一つとして直線のない自然に倣い
アールや楕円がしかもシンメトリーではなく自由に伸びて
どこまでも逆らわず、どこまでも美しく
心の底から馴染んでいきます。
そして、メインホール裏手に当たる一番大きな円形の外空間には
4反5畝(4たん5せ)の
田植え前の青々とした野が広がります。
お菓子屋さんとして食することの原点は
いのちの循環、尊さとともに
新入社員さん達が毎年田植えをすることで受け継がれていくのです。
建物と建物をつなぐこの何気ない場がもたらす
自然という神の宴
時とともに
実りとなり豊穣として人々の元に還るその様を
一年を通して見ることができるのです。
古く日本のお菓子は果物で
干柿は一番古い、菓子の原型であったそうです。
そんなことに思いを馳せながら
柿や栗を植えたままの状態で切り出したような
オブジェや柱の回廊にいると
時空が行き来するような感覚に呑まれ
人はどこから来てどこへ行くのか
自然もろとも丸ごと昇華しながら
新しい何かが始まるような気持ちになります。
懐かしくて最高に新しい
ラコリーナと藤森さんの設計した建物
このように生き、このような場と共に在りたい。
節気を超えて、命が芽吹く春へ〜