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ししまい

こんにちは。
薄墨というものです

秋晴れとは気持ちの良いものですね。
水色の、絵の具で塗りたくったような均一の空に、ちぎれ雲がぽかり、ぽかりと浮かんで。
涼しい風が、街路の端に生えたエノコログサを揺らして、さあッと通り過ぎていく

少し黄色がかってきた銀杏を眺めながら、歩くと、とても良い心地です
さすが行楽シーズンと名高い秋。散歩にも楽しい季節ですね

耳を澄ますと、遠くから「こんこんちきちき」とお囃子が聞こえます。
秋、10月。
田んぼの稲は垂れ、農家さんは収穫の時期。
秋祭りの季節です。
お囃子は秋祭りの音でしょう。
あちらで、こちらで、「こんこんちきちき」
「そろそろ獅子舞の時期だね」と、耳聡く聞きつけた誰かが言ってます

秋花粉にやられたのか、しきりに目を擦っている子どもの手を引いて、背の高い親子が通り過ぎていきました。

辺りを見回すと、確かに店頭で獅子舞が舞っていたり、お神輿が出ていたりするお家があちらこちらに見つかります。
秋祭りですね。田舎の秋って感じです

さっきの親子が、あるお店の方へ歩いていきました。
どうやら産直のスーパーのようです。
そこにもやっぱり、獅子舞が来ています。
「こんこんきちきち、こんきちきち」
お囃子の音が響いていました。

「おおい、そこの人」
信号待ちがてら見ていたら、おっちゃんに声をかけられました。
邪魔だったかな…?と思っていると、おっちゃんは大体、こんなことを言いました。
「通りがかったのも何かの縁だし、ししまいを見ていかんか?ちょうど今始めた所だしね」
おっちゃん、ここでちょっと声を顰めて、ししまいのご利益を説明してくれました。

曰く、「他の獅子舞と違って、ここのししまいは縁結びの神様で、噛まれると良縁に恵まれるのだ」と。

「さあ、こっちで見ていきなよ」
どうしようか、と思いました。
せっかく誘ってもらったのだし…
それにこのししまいは、普通に賑わっているお店で行われているイベントです。
参加するの、楽しそう。

そう思って一歩踏み出した時、はたと私の頭の中にある言葉が浮かびました。

今日は10月。神無月。

神無月の由縁はいろいろ諸説がありますが、一番有名なのは、「各地の神様が縁結びの相談をするために出雲大社へ行くから」とされています。

ここは島根じゃありません。

10月のこの時期に、まだ縁結びの神様は地方で居るものなのでしょうか?
嫌な予感がしました

私は黙ってお店に背を向け、
青信号に向かって走りました。
「こんこんきちきち、こんきちきち」
音が背を追っていました

信号を渡り切って振り返ると、さっきの賑やかさはどこへやら、さっきのお店は、薄汚れた灯りの消えた建物で、嘘みたいにすっかり静まり返っていました…

…以上、最近の散歩のお話でした

今回の調査記録

神無月の由来、出雲大社へ…の説しか知らなかったのですが、調べてみたら他にもいろいろあるんですね!
…ということで、ネットで調べて出てきた諸説を書き留めておきます。
出てきたものをさっとメモするだけなので、一次情報の出所や出典は分かりません!
しっかりした情報源を求めている方はごめんなさい!

説1)「神無月」
  各地の神様が縁結びの会議のため、出雲大社
  へ出かけていて、各地に神様がいない月だと
  いうことからという説
説2)「雷無月」
  雷が少ない月という意味から転じたという説
説3)「神の月」
  五穀豊穣を神様に感謝する月だということか
  らという説
  無→“の”を意味する格助詞
(参考:「10月 神無月 由来」のGoogle検索結果、AIによる概要)

蛇足

ここまで読んでくださった方にネタバラシ。
この記事の内容は、創作されたブログです。
調査記録は、本当にある説ですが、体験談は、半分創作です

ここでも創作をしたいけど、短編小説だと他アプリで書いているものと変わらない。
せっかくなので、noteならではの形で、なんか創作が出せたらなあ…と考えて、こんなものを作ってみました!
「創作」「小説」のタグもつけて公表しておりますが、もし問題点などあれば消去、編集しますので、ご指摘いただけると幸いです!

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