怪異が本当に出る町 第十一章 「駄菓子屋」
僕はフラフラと町を歩き出した。
頭が痛くて
耳がキーンとする
しかし…
凄い声だったなぁ…
霧が深く足元に絡みつく
深い
深い
深い霧の中を水の中を歩く様に進んでいく。
急に眠気がやって来た。
いけない!このままじゃ!怪異に襲われてしまう…
でも眠気には勝てない…
もう…ダメだ…
そう思った時に
「大丈夫?」力強く肩を掴まれた。
見上げると、この町には不釣り合いな女子高生、セーラー服は見たことがない服だったが、彼女の黒い長い髪が凄く印象的だった。
僕はそのまま無意識の海に潜っていく…
目覚めると古い古民家の和室で目が覚めた。
ボーン
ボーン
ボーン
ボーン
ボーン
ボーン
ボーン
凄く古い柱時計が時を告げる、七時?窓の外を見るが真っ暗だ。
霧が深く、部屋の明かりが霧を照らして外の様子は全くわからない…
「あ!目が覚めた?」
台所からセーラー服にエプロンをした、さっきの女子高生が顔を出した。
「ちょっと待っててね、夕ご飯出来るから」
台所から安心する味噌の香りがする。
台所の隣のリビングのテーブルに美味しそうな料理が並んでいる。
ほかほかのご飯
脂ののった鯖の塩焼き
新鮮そうな卵
大根おろしにはシラスがのって
最後に具だくさんの味噌汁
見ているだけでお腹が空く
お釜で炊いたご飯だろうか?
凄く美味しい
みるみる間に僕は料理をお腹に収めた。
「ごちそうさまでした。」
目の前にはニコニコと笑う女子高生
僕は少し照れてしまう…
そんな女子高生が食後のお茶を飲む僕に
「お願いがあるの…」
少し申し訳なさそうに女子高生の唇が言葉を紡ぐ
なんでも、彼女はこの店(駄菓子屋らしい?)に縛られてしまって、この店から半径5キロしか移動が出来ない。
この町は、人を飲み込む町なので怪異に襲われない様に、夜は屋内にいた方が安全だそうだ。
この家の部屋を一部屋、無償で貸す代わりに女の子を探して欲しいそうだ。
女の子の特徴を聞くと…
あの時、ホテルのフロントにいた女子高生だった。
「その女の子、見たことあります」
僕の言葉に彼女が飛びつくが詳細を話すとガックリしていた。
女の子と今朝仲良くなつたのだけど、女の子が落とし穴に落ちてしまって行方不明になってしまった。
彼女は実は魔法少女で、怪異達が万引きする商品を追うのだが店番が居ないので、万引きされ放題で困っていたらしい。
とりあえず店に縛られてる半径5キロを探してみたいのでと、明日店番をお願いされた。
泊まる場所も食事をする場所も無い僕にとっては、本当に素晴らしい提案だった。
離れに泊まれるそうで、僕はそこで荷物をおろした。
離れは八畳ほどの畳の部屋
隅っこには良く干された、ふかふかの布団が置いてあった。
ここまで霧の深い町で、ふかふかのお陽さまの匂いのする布団は初めてだった。
彼女に尋ねると、祖母が魔法使いで地下に工房があって、そこに人工太陽があるとか?
想像以上の答えが帰ってきた。
「今度、見せてあげるね♪」
彼女はにっこりと笑いながら母屋に消えた。
この離れにはトイレにお風呂まで備え付けられていた。
僕はゆっくりと湯船に沈み
明日からの予定を考える。
「とりあえず彼女に亡くなった家族に会える家の話を聞こうかな…」
今夜はゆっくりと寝れそうだ…
明日に備えて早めに寝よう…
初めて熟睡出来そうだ…
ふかふかの布団の中で
久々に家族の夢を見た