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Y Combinatorの最新コマースサービス 10選

こんにちは。Z Venture Capitalでコマース領域を担当している内丸です!

前回のnoteではY Combinator (以下YC) 2023のサマーバッチに選ばれたB2Cサービスを紹介しました。

今回はYC 2023サマーバッチのコマース系サービスを取り上げます。
私の目視で数えたところ10社ありました。意外と多い印象です。

それでは早速紹介していきます!




1. Airgoods:食品専門の卸売マーケットプレイス

雑貨/アパレル等の卸売マーケットプレイスとしては評価額が$12Bを超えるデカコーンであるFaireが有名ですが、
食品版のFaireを目指しているのが「Airgoods」です。

食品小売店の多くは新商品/トレンドの最新情報を得るために、SNSで商品を見つけてDMを送るなど地道で面倒くさい作業を続けています。
Airgoodsを使うことで、食品小売店は新商品/トレンド商品の検索、サンプル品の請求、注文処理まで一気通貫で行うことができるようです。

現時点(2023年7月)では、ノンアルコール飲料・機能性飲料を中心に1,000以上のブランドを取り扱っており、GMVは$15万ドル以上(前月比+53%)、売上は$2万以上(前月比+61%)と急成長中とのことです。

YC発の新たなデカコーンになるか要注目です!

Airgoodsの商品購入画面


2. Obento Health:医療機関向けShopify

医療機関向けのShopifyを目指しているのが「Obento Health」です。

医療機関にとって、診療報酬以外の健康関連商品(運動器具/ドクターズコスメ等)の販売は重要な収益源となりますが、これまで対面でしか販売する機会がありませんでした。
Obento Healthを使うことで、医療機関も簡単にECサイトを立ち上げることができます。

Obento Healthならではのプロダクト上の特徴や強みというのはよくわからなかったですが、今後のプロダクトの進化を楽しみにしています!

Obento Healthのプロダクト画面


3. Movley:品質管理プラットフォーム

不良品によるレビューの低下がEC売上に与える影響は計り知れません。そして、EC事業者の委託工場がグローバルに広がったことで、商品の品質管理はますます難しくなっています。
Movely」はEC出品者が商品の品質検査/ 管理をワンストップで行えるプラットフォームを提供しています。

Movely上で商品情報の詳細をアップロードすることで、その商品の包括的な品質検査レポートを得られ、品質検査の結果を一元管理することができます。

現時点では中国/インド/ベトナムのみをカバーしていますが、今後対応地域を追加していくとのことです。

Movelyの品質管理画面


4. Martola:請求書・発注書管理プラットフォーム

中小の小売業者は常に人不足であり、業務全体を把握する時間もリソースもない状態です。その結果として、請求書や発注書の管理もままならず、過払いや未払が発生しています。
そのような課題を解決するため、「Martola」は請求書と発注書を自動的に照合して、正確な請求書への支払いを行うソフトウェアを提供しています。

Martolaとしては請求書・発注書管理業務の効率化はあくまでも短期的な目標であり、中長期的にはプロダクトラインを増やして小売業者の他の課題も解決していきたいようです。

Martolaの請求書・発注書管理画面


5. Chow Central:バーチャルレストラン

次はアフリカ都市部の中産階級向けのバーチャルレストランチェーンを展開している「Chow Central」です。
※ちなみにバーチャルレストランとは、デリバリーに特化した店舗を持たないレストランのことです。

YCにバーチャルレストランが採択されていることを意外に思い、過去の採択企業も調べてみましたが、他にも数社見つかりました。

  • FoodCourt:Chow Centralと同様にアフリカ向けにバーチャルレストランを展開しています

  • Unfurl:アメリカで展開していたバーチャルレストランでしたが、今はもうサービス停止しているようです

コロナ禍が落ち着いたことでバーチャルレストランのトレンドは落ち着いたと思っていましたが、今後この領域で新たなユニコーンは生まれるのでしょうか?今後も注目していきたいと思います。

Chow Centralが提供するブランド


6. Guac:食品小売業者向け需要予測用AI

食品小売業者にとって、廃棄ロスは大きな経営課題です。
日本のスーパーマーケットでは、商品カテゴリーの中にはロス率が平均10%を超えるものもあります。
このようなロスを抑制するためには正確な需要予測が重要となりますが、大手のスーパーマーケットチェーンでさえ、簡単な回帰モデルやエクセルシートで計算している状況です。

機械学習を用いることによって正確な需要予測を食品小売業者向けに提供しているのが「Guac」です。

Guacが提供するツールの予測精度は非常に高く、現在の平均予測誤差(MAE)は0.95個であり、廃棄ロスの38%を削減することができるとのことです。

Guacの予測値と実績の比較


7. Wyvern AI:マーケットプレイス向け商品ランキング用AI

Amazon/ eBay/ Etsy/ Faire等のマーケットプレイスにとって、どの商品をどのような順番に表示させるかは収益を最大化するために非常に重要な要素となっています。そのため大手のマケプレは、大量のデータサイエンティストを高額の給与で雇っています。

一方で、大半のマケプレはブランドもお金もないため、データサイエンティストを雇うことはできません。
Wyvern AI」はこのような課題を持つマケプレ向けに商品ランキングを最適化するためのAIソリューションを提供しています。

Wyvern AIが提供するソリューションは、CVR/ GMV/ 売上/ 利益のいずれを最大化するのか等の事業の注力ポイントに合わせて、モデルの細かい調整ができるようになっているとのことです。

Wyvern AIによる商品ランキングの変化


8. Converge:EC向け顧客データプラットフォーム

様々な形で得られる顧客データを一元管理し、適切に活用するためのツールとしてCDP(顧客データプラットフォーム)があります。CDPの代表的なプレイヤーのSegmentはTwilioに約$32億で買収されたことでも話題となりました。
Segment等の従来のCDPは技術的な知識を持ったエンジニア/ マーケターがいないとセットアップが難しいという課題がありました。

技術的な知識がないEC事業者でも数分で設定を完了できるCDPを提供しているのが「Converge」です。

Convergeのサービスイメージ


9. Revamp:EC向け顧客セグメンテーションツール

今回のバッチには、前述のConvergeとよく似たサービスを提供する「Revamp」という会社もあります。
Revampは顧客データのセグメンテーションに特化したツールになっていることが違いのようです。

マーケティング効果が最大化されるように顧客データのセグメンテーションを自動的に作成し、ShopifyやKlaviyoと連携することで各セグメントのKP等を可視化してくれるようです。

作成された顧客セグメント毎のKPI


10. Glaze:AIショッピング・プラットフォーム

Glaze」はAIによってオンラインショッピング体験を刷新しようとしています。
「レトロな80年代のパーティー衣装」といった気になるキーワードで検索をかけるとそのイメージに近い服をレコメンドしてくれるプラットフォームです。

販売されているアイテムが少ないせいか、現状はレコメンドの精度が低い印象ですが、今後レコメンドの精度も向上していくことを期待しています!

Glazeのトップページ


おわりに

以上、YC 2023サマーバッチに採択されているコマース系スタートアップでした!
生成AI関連のスタートアップが非常に多いYC2023ですが、コマースに限ってみるとあまり生成AI色が強くないのが興味深いです。

まだ開発途中のプロダクトが大半であるため、これらのサービスの進化も今後追いかけていきたいと思います。

事業についてディスカッションしたい方から起業のネタを探している方まで皆様とお話させて頂きたいです!

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