医療トピック③~教育回診~
今回は杏林大学医学部付属病院感染症科でご勤務されている兒島先生から、「教育回診」についてのお話です。
チームでの回診は患者さんの情報共有、方針決定の場でもありますが、若手医師への教育の場でもあります。教育のポイントは色々ありますが、今回は身体診察のベッドサイドティーチングに絞って自分がよく回診で行なっていることを紹介します。
初期研修医や専攻医が気づきにくい、一人では実践しにくい、正しい方法を習得しにくい診察を中心に扱っていきます。
・心雑音
MRとASの鑑別で頸部を聴診、頸動脈、橈骨動脈を触れながら聴診(ASの遅脈を感じる)、PEのⅡ音の固定性分裂(Ⅱ音の分裂は慣れないと気づきにくい、生理的にも吸気時にはⅡ音は分裂するので自分の心音を深呼吸しながら聴いてみると良い)
・中心静脈圧
仰臥位から徐々にベッドアップし頸静脈の見え方の変化を見る、外頸静脈は怒張の有無、内頸静脈は拍動の有無(1心拍に対して2回陰性波の拍動)と部位を確認、hepatojugular reflux
・下腿浮腫
pitting edemaで40秒以内に戻るかどうかで低アルブミンと心不全の鑑別
・感染性心内膜炎
眼球結膜の出血は眼球を上下させて黒目の上下も確認、爪下出血は下からペンライトで光を当てて確認
・関節
熱感は自分の掌が暖かい人は掌より手の甲で触れた方がわかりやすい、認知機能が落ちている患者さんは症状を訴えられないことが多いので発熱時には必ず関節を診察する
・腹膜刺激症状
足底を叩いて痛みが出る
・急性腎盂腎炎
CVA叩打痛に加えて、腎双手診(深呼吸してもらいながら背部から腎臓を持ち上げるイメージで触りながら腹側からも触って痛みが出るかどうか)
回診中の研修医の先生の反応と、どれくらいメモを取っているかが指導医に対する評価だと思っています。
引き続き医療トピックも発信してまいります。
ご質問ありましたら若手部会(公式LINE(https://lin.ee/ysEXHp5))にご相談ください。
執筆:杏林大学医学部付属病院感染症科 兒島裕樹