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50代人見知り主婦にも「行きつけ」のカフェができた

詳しくないけど、コーヒーを無性に飲みたくなるときがある。
あ、粉が切れている。と、気づいてから、行きつけのカフェにコーヒー豆を買いに行くのに時間がかかった。
「行きつけ」だって。なんだか気恥ずかしい。
昔から、いつかは「行きつけ」という言葉を使ってみたかった。

ドラマでも漫画でも、主人公は「行きつけ」のお店があって、マスターと何気ない会話を楽しんでいる。
「マスター、今日は〇○があってね……」
「よぉ、△△元気だった?」
とか。
そこに来ている常連客とも気楽に会話をする。
ときには悩み相談もしたりして。
憧れの妄想が頭の中で膨らむ。

私がその会話を繰り広げるなんて絶対無理だと思っていた。
なんせ、自分1人で外食や休憩することがほんとど皆無だから。
どうしても外食しなければならないときは、思い切ってお店に入らないといけない。
そこには「勇気」が必要なのである。

お店に入るハードルが高いから、どこかに出かけても何も食べないで帰ったり、入ったとしてもパン屋さんの片隅のイートインコーナーでささっと食べたり。
1人でお店に入るのが苦手なのである。
誰かが見ていると思うと、ゆっくり食事もできない。
どんだけ自意識過剰なんだろう。

そんな私だが、仕事のために近所のカフェを取材することに。
店主さんがとてもよい人で、取材後も顔を出している。
お店には、いつもおずおずと入っていく。
そうすると、店主さんが「なんだ!最初から言ってよ。いつも初めてみたいな顔で入ってくるから」と言われる。
そう、私の顔なんて覚えているかなと、ひっそりと入るのだ。

ひっそりと入るわりには、一度打ち解けると心を開くのも早い。
「実は〇〇で~、△△で」とべらべら喋る私がいる。
店主さんも、笑顔で返してくれる。
そこに居合わせたお客さんも交えて、何気ない会話が続く。
「大判焼きと、焼きそばを出している昔ながらのお店があってね」
「へぇ~、そうなんですか」
「近所の子どもたちがよく集まってくるそうだよ」
「いいですね」
初めて喋るおじさんが、スマホの画面を見せてくれる。

そうこうしているうちに、次から次へとお客さんが入ってきて、小さなカフェは満員に。
店主さんが、一人ひとりに気さくに声をかけている。

コーヒーの香りがお店の中をふわっと包んでいく。
友だちとのお喋りに花を咲かせている人。
店主との会話を楽しんでいる人。
皆がゆっくりとくつろいでいる。

私もおやつのお団子を頬張って、本の頁をめくっている。
お隣のお喋りも耳に心地よく響く。

その後、「ごちそうさまでした」と、挽き立てのコーヒー豆を手に笑顔でお店を出た私。




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