Vol.69#挑め!Leading Article/ハイチの苦境
今日のテーマは”南米の国、ハイチ”です。
🔹🔸このコラムでは毎朝その日のLeading Articleから解釈の決め手となる語句を3つ選んで解説していきます。定着させて英語を読む事がどんどん”楽”にしていきましょう🔹🔸
良し悪しはともあれ国があり、警察がある事は私たちにとっては当たり前の事として認識されています。その上で問題点や改善が議論されるわけですが、世界にはそうした常識が全く通用しない国も存在します。ハイチがその典型例です。
国土のほぼ全域がギャングの支配下にあり、首都ポートプランスも陥落寸前の状態ですが近隣のアメリカや国際社会による介入も効果が出ていません。そもそもが政情の不安定な国でしたが、2021年の大地震により公共機関が機能を失い国家としての体をなさなくなったようです。
国民が流出し難民となったり、犯罪者の逃げ場となるなど問題はハイチ国内に留まりません。1日も早く有効な手を打つ事が必要な状況です。
ギャングの親玉が大統領を脅迫し、大統領はそれに負けて辞任したり、刑務所がギャングの襲撃をうけて囚人4000人が脱獄したり、ハイチの惨状は我々の想像を超えています。
1日も早い沈静化を願いながら、読み進めていきましょう。
◎今日のLeading Article:Haiti’s Plight
The descent of an impoverished country into anarchy needs to be arrested
No country in the western hemisphere is in a more desperate plight of poverty and deprivation than Haiti. In the late 18th century, as a colony of France founded on the evil of slavery, it was renowned for its wealth as an exporter of sugar, coffee and cacao. Its recent history encompasses tyranny, natural disaster, contagious disease and lawlessness. As we report today, an estimated four fifths of its territory are controlled by violent gangs as government authority has collapsed.
There is no obvious method of preventing the descent of Haiti into a state of anarchy and penury.
But the country’s plight has consequences beyond its borders, as well as for the misery of its population of some 11 million. A failed state in the Caribbean is a standing threat to the stability of its neighbours and provides a constant stream of desperate would-be migrants to Florida. It is a humanitarian crisis that threatens to burgeon in the absence of effective international action.
The immediate cause of the unrest is the absence of any functioning civic institutions. The country’s president, Jovenal Moïse, was murdered by unidentified gunmen in 2021. Since then, Haiti has been racked by gang warfare and economic chaos. About half the population face acute hunger, and large numbers are at risk from an outbreak of cholera. Last week the interim prime minister, Ariel Henry, resigned amid chaos as gangs threatened to overrun the capital, Port-au-Prince.
The international community has no responsible option to turn away, given the damage it has previously caused. The United States sent troops to Haiti in 1994 to reinstate an elected president who had been toppled in a military coup. It was an ill-considered intervention, requiring American troops and then a UN force to remain in the country for almost another quarter century without quelling an incipient problem of political violence.
A catastrophic earthquake in 2010 left some 200,000 dead and destroyed hundreds of thousands of buildings. The failings of the international aid effort, in which UN peacekeeping forces and NGO staff engaged in sexual abuse of women and girls, was a scandal that elicited fierce and warranted hostility within Haiti and beyond.
Owing to this tarnished history, many Haitians and others in the region are sceptical that the UN can do anything to assist them and fear they might merely do harm. Even so, and allowing that only a political solution can ultimately provide Haiti with the means of sustainable recovery and development, the UN needs to provide a desperate people with a respite. António Guterres, the UN secretary-general, has proposed a “rapid action force” to work with Haitian police to suppress gang warfare. It is hard to see how anything less can provide safety and secure order.
The purpose of such a deployment would be strictly limited. It would be to remove the gangs from critical infrastructure and transport hubs, including ports and airports, and establish humanitarian corridors within which aid in the form of food and fuel could reach a beleaguered people. An international force working with the police would have a chance of interdicting the flow of weaponry to the gangs, who are plainly being supplied from outside.
This is no panacea, as the country’s future lies with its people. But unless Haiti’s people are protected from arbitrary violence and imminent starvation, their future will be barren indeed.
□解釈のポイント■■■
①penury/貧困
極めて貧しい、極貧状態です。
元々地震や内乱で貧しかった国が地震でさらに困窮しました。そこにやってきた国連関係者がスキャンダルに見舞われ、人々は国連に対して懐疑的になってしまい支援はうまくいかない状態が続いているようです。
②overrun/制圧する
軍事的な方法で都市や地域を制圧する事を意味します。
他の国や反政府組織ではなく、市中のギャングが徒党を組んで国を制圧しようとしているというとんでもない状態です。北斗の拳にはヒャッハーと不快な叫びをあげながら悪虐の限りを尽くすギャングが登場しますが、そんな輩が現実のものとなっている状況です。
③respite /小休止
短い休息という意味です。
政治的な解決なく外国が支援だけしても問題は解決しないというのは正論ですが、それにしてもまずはギャングを何とかして息を継がなければその先の問題を解決する事はできません。その部分を周辺の国や国連が支援するのは必要な事です。
■試訳
貧困国が無政府状態となるのを阻止する必要がある。西半球で貧しさと物不足がもっとも深刻な国、それがハイチだ。18世紀末に奴隷制の悪に基づくフランスの植民地であり、砂糖やコーヒー、カカオの輸出国としての豊かさで知られていた。近年の歴史においては独裁、自然災害、疫病、無法状態にみまわれている。報道の時点では、国土の約5分の4が暴力的なギャングの支配下にあり、政府は崩壊してしまっている。ハイチが無政府状態、最貧状態に陥るのを食い止める方法は明確でない。しかし、配置の苦境は国境を越えた影響を伴う。それは1100万人程度の人口の悲劇だけでは終わらない。カリブ地域の国家崩壊は近隣地域安定に対して現実の脅威となり、フロリダにひっきりなしに移民希望者が流入する事態を招く。不安定な状態の直接の原因はちゃんと機能している公的機関がない事だ。大統領のJovenal Moïseは2021年に銃で武装した身元不明の男達に殺害され、それ以来ハイチはギャングの抗争と経済の混乱状態に苦しみつづけている。人口の半分が危機的な空腹状態にあり、多数がコレラ流行のリスクにさらされている。先週、内務大臣のAriel Henryは首都のポルトープランスを制圧するというギャングの脅しによる混乱のさなか辞職した。国際社会は責任のある対応ができていない。これまでの損害の大きさから目を逸らしているのだ。アメリカは1994年に配置に軍を派遣し、選挙で選ばれたものの軍のクーデターで就任をはばまれていた大統領を復職させた。しかし、しっかりとした検討を経ていない介入だったため、アメリカ軍と国連軍はそれから約25年間駐軍を余儀なくされた。しかし、その間でそもそもの政治における暴力という問題を抑える事ができなかった。2010年の壊滅的な地震により、20万名が命を落とし何千何万もの建物が破壊された。国際的な支援の取り組みも失敗に終わった。国連平和維持軍とNGOの職員が女性や女児に対して性的な虐待をおこなっていたのだ。これはスキャンダルになり、ハイチ国内外で強い怒りと根拠のある敵意を招いた。この汚点ばかりの歴史によりハイチ人の多くとその他の住民は国連は支援などしてくれず、ただ有害なものではないかと懸念している。仮にその通りで、政治的な解決方法のみが窮地にある国民に持続的な復興と発展をもたらすのだとすれば、国連はそうした窮地にある国民に対して多少は息がつけるようにしなければならない。国連事務総長のAntónio Guterresは”すぐにでも実働部隊を派遣し”ハイチ警察と力を合わせギャングの抗争を取り締まる事を提案している。安全と安定した秩序をもたらす最低限度の対応であるのは明らかだ。そうした派遣行為の目的は極めて限定的なものとなるだろう。具体的にはギャングをもっとも重要なインフラと港湾や空港といった交通ハブから排除し、人道支援の輸送ルートを確立し食糧や燃料の形での支援が苦しんでいる人々の手に届くようにする事だ。他国の軍事部隊が警察と協力すれば武器がギャングに流入するのを禁止する事ができるだろう。兵器は明らかに外部から供給されている。これで全てが解決するわけではない。国の未来はその国民と共にある。しかし、ハイチの人々が恣意的な暴力と迫り来る飢えから守られなければ、彼らの未来には草一本生えないものとなるだろう。
◇一言コメント:
ギャング組織の名前は”バーベキュー”という名前で、その親玉は元警察官だそうです。世紀末を描いた漫画のような現実の話です。
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