【ノーベル賞受賞】AIのゴッドファーザーはチェスがお好き
ノーベル平和賞受賞に沸く我らが日本だが、注目すべき受賞者はそれ以外にもいる。社会に与えるインパクトとしては今回最大の受賞者、AIのゴッドファーザーとは何者か、そして英国の残念な伝統とは?
🔹🔸英国の日刊紙から思わず誰かに話したくなった記事を紹介します
✔️なんとほぼ英語力不問!気軽にのぞいてくださいね
✔️それでも”誰かに話したくなる”英単語ベスト3を解説
✔️記事の理解に必要な固有名詞、引用句、トリビアもだいたいカバー!🔹🔸
◎”Nobel Tradition”(ノーベル賞に関する伝統とは)
ノーベル平和賞受賞に沸く我らが日本だが、今回注目すべき受賞者はそれ以外にもいる。英国の受賞者、AI企業Deepmind社を率いるDemis Hassabis卿もその1人だ。なぜなら彼の存在は今年以降の全ての分野で無視できないものとなるからだ。その理由を3つを紹介しよう。
一つ目は受賞を決めたAlphaFoldと呼ばれるAIソフトの革新性。
同ソフトは現在主にDNAとタンパク質の組成における相互作用を解析されるのに利用されているが、一つ前のバージョンでは28%にとどまっていた予測精度が65%に急上昇した。この改善は医学の各分野において治療方法の大革新を引き起こす可能性を持つ偉業だ。なぜならDNAとタンパク質は基本的な生命の構成要素であり。疾患メカニズムの理解や新たな治療法の開発 にその解明は不可欠だからだ。
DNAの研究とその応用を一段別の次元に押し上げるこのソフトにより2025年は各分野で前代未聞の進歩が実現する事は間違いない。2025年、彼とDeepmind社によるイノベーションについて耳にする事が増えていくだろう。
二つ目はDemis Hassabis卿のバックグラウンド。
オックスフォードで学んだAIの研究者である彼はもう一つの顔を持つ。それは英国屈指のチェスの神童(①prodigy)という過去だ。4歳の頃に父親と叔父がチェスを指したのをみた瞬間、ゲームをマスターし13歳になる頃には国内屈指のプレイヤーとして名を馳せていた。よくAIを発展させチェスをやらせる話は聞くが、Demis卿の場合は逆だ。チェスの天才がAIの天才となったのである。名手の次の一手に世界中が注目を注いでいる。
三つ目はDemis卿とDeepmind社の微妙な立ち位置。
Deepmind社は英国人であるDemis卿が立ち上げた英国の会社である。しかし、2014年にGoogleから買収されて以降は英国以外にもカナダやアメリカ、仏独に拠点を開設してきた。このままDeepmind社が英国の企業であり続ける保証はどこにもない。オックスブリッジを擁する英国はノーベル賞に置いては国の規模に見合わぬ健闘(②punch above one's weight)ぶりを見せている。2023年まで実に138個の受賞を実現しており、ノーベル賞受賞者を育成する英国の教育品質は疑うところのないものだ。しかし、その成果で稼ぐ部分については他国の企業に掠め取られる事が多々あった。同社がシリコンバレーにその才能を本社ごと持っていか(②whisk away)れぬよう、英国は何ができるだろうか。
Chat GPTがリリースされた2023年はAI元年と言われるが、AIの発達スピードは著しく2025年は3年目を通り越して一気に新世紀に突入せんばかりの勢いだ。その原動力のであるDemis卿のノーベル賞受賞も順当であるといえるだろう。どの業界の事業もその破壊的なイノベーションから逃れる事はできない。きっと貴方の業界でも彼の名前を聞く日が来る。
□本日のポイント■■■
①prodigy/神童
卓越した能力を持つ人、特に子供の事。音楽や学問での早熟な天才という感じですね。その反対で凡庸な子供を指す言葉にmediocrityがあります。幼き日のDemis卿はチェスのトーナメントで得たお金でコンピューターを買い、プログラミングの世界に駒を進めたそうです。
🔳A child chess prodigy, video game developer, and now a Nobel laureate, Hassabis’s journey is a testament to interdisciplinary brilliance.
(試訳)チェスの神童、ビデオゲーム開発者、そして今ノーベル賞受賞者とHassabisのこれまでは分野を超えた至高の存在を証明するものであった。
②punch above one's weight/期待を超える成果を上げる
ボクシングの言い回しです。体重とはすなわち攻撃力なわけですが、小柄な選手が想定よりも思い一撃を放つ瞬間があります。期待を超える成果を実現する様子を指します。この逆はunderperfomです。
🔳Britain boasts an impressive roll call of Nobel prize winners, consistently punching above its weight globally.
(試訳)英国のノーベル賞受賞者リストは感銘を受けるに値するものであり、常に世界で身の丈を超える健闘をしている。
③whisk away/かっさらう
すばやく持ち去るという意味です。whiskは素早く軽い動きを指し、awayは奪ったものを遠くに持ち去ってしまうイメージでしょうか。調理の世界でwhiskerはしゃかしゃかするやつ、泡立て器です。軽快なイメージの言葉です。
🔳Silicon Valley would happily whisk away British talent, given the chance.
(試訳)シリコンバレーは機会さえあれば英国の才能を掠め取るのを躊躇しないであろう。
◇一言コメント
Demis卿はじめDeepmind社の面々は今回ノーベル化学賞で受賞を決定しました。AIを使ったタンパク質構造予測プログラムは化学賞なんですね。最近は化学なんだか物理学なんだか医学なんだか何とも言えない研究が多いですね。
タイトルはnobel(ノーベル)とnoble(高貴な)の掛け言葉になっています。ノーベル賞をとるような研究者を輩出するものの、良い所を他国の企業にもっていかれる英国の負けパターンを揶揄しているようです。