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マドンナ・ルイーズ・チッコーネ

“クイーン・オブ・ポップ”
世界で最も成功を収めた女性音楽家であり、史上最も売れたアーティストの一人。
その言動は下品で露骨で節操がなく、「ライク・ア・ヴァージン」の頃から多くのアンチが存在していた。しかし奇抜なファッションで歌い踊る彼女は時代の寵児となり、その姿態は世界中で受け入れられていく。
1984年時点で物心がついていたのなら彼女の存在を知らない人はまずいないだろう。あの頃はテレビやラジオ、街中のあちこちで彼女のヒット曲が流れていた。そして時代はMTV全盛期。そう、マドンナの魅力は何を置いても先ずビジュアルだった。

「Movie Hits 2 Love & Ballad」という映画挿入歌のオムニバスCDを聴いたのは2017年だった。「ビジョン・クエスト~青春の賭け」という映画の挿入歌だった「クレイジー・フォー・ユー」。どこかで聴いた覚えはあったものの、もしもこのオムニバスCDにこの歌が収められていなければマドンナを好んで聴くことはなかったかもしれない。
偶然に聴いたこのバラード自体が一本の映画のような魅力に溢れていた。

「クレイジー・フォー・ユー」 (Crazy for You) は、1985年の映画『ビジョン・クエスト/青春の賭け』(Vision Quest)のために書き下ろされた

マドンナにとってスターになることスターであり続けることは目的そのものなのかもしれない。彼女は言い切る「私は世界を支配したい」と。
欲しいモノを手に入れるためなら何でも、まさに何でもやる炎の女、それがマドンナだった。
そんなマドンナの凄さとは、自らの傲慢さを成立させるプロフェッショナルにあると思う。傲慢なスターであり続けるためには売れ続けることこそが絶対条件。彼女には常に、自分にお金を払ってくれるファンの期待を裏切らない高いプロ意識があった。アーティスト性よりも、匂い立つようななまめかしい姿態で観客の欲求を満たす力こそマドンナの本流だった。そしてこの力によって自身の欲求をも満たし続けた。



これは人生の進むべき方向を考えるためのマトリックス。具体的には仕事の選択のために使う。
選ばれた存在とは「やりたい」ことが「できる」①のこと。いったいこの世の中で①で生きていける人はどれ位いるのだろうか?
1万人に1人なのか?
10万人に1人なのか?
まして大きな成功をも収めたとなれば、
1億人に1人にも満たない数かもしれない。
“そんな星の下に生まれた”という選ばれた存在、それがスターである。
マドンナは、世界で最も成功を収めた女性音楽家であり、史上最も売れたアーティストの一人である紛れもないスター。しかしマドンナは①で生きていたのだろうか…

①で生きていければこれ以上の幸せはない。しかし現実はそううまくはいかない。一般に仕事の選択は②が賢明であるとされる。仕事は他人のためにやることである以上「やりたくない」ことでもやらざるを得ない。ポイントは「できる」ことをやることにある。「できる」とはつまり才能である。しかし「できる」ことを自らの才能だと気が付かない場合は多い。それは「できる」ことは「できる」本人にとっては普通のことだからである。他人にとっては困難でスムーズにできないことが本人にとっては何の苦労もなくスッとできてしまう。他人から見れば凄いと思えることでも本人にとって普通であれば自らの才能だとは気が付かない。しかし自らの「できる」才能に気が付き、その才能を生かせる仕事に就けば充実した生き方になる。スタートは「やりたくない」であっても、「できる」仕事で成果を出し他人の役に立ったとき、「やりたくない」を超え、①でなくても幸せになれるはずである。

マドンナは「やりたい」ことではスターになれないことを誰よりも自覚していた。「やりたい」ことには拘らず、目的を果たすために②を選んだ。
マドンナは自らをコントロールし、商品化し、プロデュースし、持前のセックスアピールで観客の欲求を満たし、自身の欲求をも満たし続けた…

プロフェッショナルに徹した美しきスーパースター、それがマドンナである。

マドンナ永遠の偶像 (アイコン):ルーシー・オブライエン著 / 宮田攝子訳 (二見書房)出版年月2008.5

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