【名盤伝説】”菊池ひみこ / all right”
MASTER PIECE 80年代に日本のフュージョン全盛期を駆け抜けた女性ジャズ・ピアニストの菊池ひみこ1982年リリースのソロ3作目『オール・ライト』です。
ひみこさん初の海外録音としてLAのマッド・ハンター・スタジオでレコーディングしました。ここはチック・コリアのスタジオで、スタジオ階下にはチックのオフィスがあり、時折チック本人もスタジオを覗きに来たという、メンバー緊張のレコーディングだったと振り返っています。
レコーデイングにはひみこさんの夫で、この作品ではプロデュースも手がけた松本正嗣(G)、杉本和弥(Bs)の他には、既に盟友のアーニー・ワッツ(Sax)、アル・ビズッティ(Tp)、ジョン・ロビンソン(Drs)、スティーヴ・フォアマン(Perc)らが参加しています。
当時ひみこさんが熱烈に関心を寄せていた”南極”がテーマとのことで、極地にまつわるタイトルが並びます。が、何故かロスののどかな公園の公衆電話が写るジャケット。しかもタイトルは軽く「オーライ」って、何故?? ^^;;。
極地のストームを思わせるSEと共に始まるA1。観測船の出航をイメージさせるハードなナンバーです。シンセ~トランペット~エレピと次々とソロ楽器が繋いでいく構成は、ミディアムながもテンポよくて質の高いプレーが堪能できます。
アーニーによる珍しいウィンド・シンセ(ピアニカ??)がメインのA3。タイトルの「ポールスター」は普通は北極星という意味ですが、極地の星ということで「南極星」という意味にも用いられるようです。天空の座標を眺める静かなイメージが広がる曲です。
B1のタイトルは決してスィーツのことではなく、南極近くで見られる表面が平坦な氷のことをこう呼ぶそうです。折り重なるよなうなホーン隊のアンサンブルが楽しいナンバー。さりげくバックで奏でるひみこさんのリズム・ピアノも抜群だし、4ビートへのテンポチェンジで聴けるファンキーなエレピ・ソロも素敵です。後半のスラップ・ベースとドラムのJ・ロビンソンのタイトなリズムへの展開も無理は全く感じません。バラエティ豊かな構成のフュージョン・ナンバーです。
プロデューサーの松本氏の曲B3。タイトルは南極に一ヶ所だけある凍らない泉があるといいます。ひみこさん自身によるスキャットが聞けます。凍らないオアシスで寛いでいるようなリラックスした雰囲気のナンバーです。
ひみこワールド全開の素敵なアルバムです。