【名盤伝説】”Eric Clapton / No Reason To Cry”
お気に入りのミュージシャンとその作品をご紹介します。UKロックのレジェンドギタリストエリック・クラプトンの1976年のアルバム『ノー・リーズン・トゥ・クライ』です。
復活を遂げたECの心機一転再デビューの名盤『461 オーシャン・ブルーヴァード』の素晴らしさに感動して、それに続くアルバムは如何にと期待値マックスでしたが、ライブ盤『E.C. Was Here』に続いて、渋すぎる『There's One In Every Crowd (邦題: 安息の地を求めて)』に戸惑いを隠せなかった当時高校生だった私です(汗)。確かにECはブルース・マンだとの認識はあったものの、その真髄には全く理解が及ばなかったこともあり、クラプトンってどうなの?という日々でした。
そして76年にリリースされたアルバムは、ようやく私の求めていた嗜好に近いものでした。当時流行のレイドバックした、ゆったりとした雰囲気の中にもしっかりと感じ取れるポップス的なニュアンスの曲もあり、良い意味で『461』の続編という印象でした。
このアルバムはボブ・ディランのバック・バンドとして集められたザ・バンドのスタジオで録音され、もちろんバンドも全面参加。そしてもちろんディランも参加、さらにカール・レイドル(Bs)やバックアップ・ボーカルのイヴォヌ・エリマンやマーシー・レヴィといった御用達メンバーも参加していました。他にも多くのミュージシャンとのセッションの中から厳選されたナンバーで構成されています。
いきなり脱力 (レイドバック) したリズムのA1。どこか頼りなさを感じさせるECのボーカルをイヴォンヌとマーシーの女性ボーカル陣が力強く支えます。ゴスペルとブルースの融合という雰囲気ですかね。
一転、明るい曲調で『461』のラストを飾った「Mainline Florida」を想起させるA2。こちらもECとコーラス陣との掛け合いが聞けます。パーカッション全開の楽しいナンバーです。
このアルバムの聞きどころの一つと言えるA3。ECとディランの共演です。ザ・バンドのロビー・ロバートソンの特徴のあるギターがほぼ全面にフィーチャーされています。ECがザ・バンドのメンバーになりたかったというエピソードが伝わっています。
A5もザ・バンドのメンバーのリック・ダンコ作のナンバー。後にリリースされる名曲「Wonderful Tonight」に匹敵する抒情的な雰囲気があるなと私は勝手に思っています^^;;。
ポップな小曲B1。この曲案外好きです。あれ?ECのギターが目立つ曲がありませんね。
マーシーのボーカルが全面にフューチャーされたB3。ECのスライド・ギターが曲調に反して切なく聞こえるのはなぜでしょうか。
デレク&ザ・ドミノスの名曲「Anyday」を彷彿とさせるスライド・ギターを弾きまくりのB4。こちらもメインのボーカルはコーラス隊に譲っています。
アルバムのラストB5にしてようやくECのギターがフューチャされる曲が出てきました。とはいえスローなバラードということで、ブルースっぽさはほとんどありません。
こうして改めて聞き直すと、ECが意外にフューチャーされていないアルバムだったと驚きます。それでもチャート・アクションはUK本国では8位、USでは15位、日本でも11位とそこそこの成績をあげています。シングルでもB1がトップ40入りするなど、評判は決して悪くないです。
奇しくもこの1976年11月にザ・バンドは最後のステージ「The Last Waltz」を行います。もちろんECも参加します。そのステージでは、この新作から「All Our Pastimes」と定番のブルース・ナンバー「Father On Up The Road」が演奏されました。ECが是非共演したかっという夢がレコーディングを含めラスト・チャンスで叶ったということですね。