【名盤伝説】”TOTO / Isolation”
MASTER PIECE USの実力派ロック・バンドTOTOの5作目のアルバム『アイソレーション』(1984)です。
前作『TOTO IV (聖なる剣)』がメガ・ヒットし、次回作に多大な期待が寄せられる中で、前作録音直後にオリジナル・メンバーのベーシストのデヴィド・ハンゲイトが家庭の事情で脱退して、ポーカロ兄弟の次男のマイク・ポーカロが正式メンバーとして迎えられ、キーボードのスティーヴ・ポーカロと共に鉄壁の絆で結ばれたバンドとなったと思いきや、この新作録音中に同じくオリジナル・メンバーだったボビー・キンボールが薬物問題で離脱します。そしてハード系のハイトーン・ボーカリストとして様々なバンドで流浪の経歴を持つファーギー・フレデリクセンに白羽の矢が立ちます。
TOTOのバンド内で影響力の大きかったドラムのジェフ・ポーカロが強力に推薦したようです。正直、ボビーよりも安定感があり、ボーカル・チューンではギターのステイーヴ・ルカサーやコンポーザーとして円熟期にあったキーボードのデヴィッド・ペイチもボーカリストとして喉を磨いていたことを考えると、バンドとしては多彩な曲調には十分すぎるほどのラインナップだったと思うのです。
アルバムトップのA1は、ペイチの歌からの新入りファーギーのコーラス、そしてマイクのベース・ソロと続く曲構成で、新生TOTOのお披露目のような曲。ハード路線で不評だった『III』(個人的には好きですけど)のテイストからギターのエッジをやや丸めたような、ハードなロックは好きだけど、少しだけ大人になりましたよって感じでしょうか。この曲改めて聴くと、かなりアス・キックで良いです。
続くB2もハードなチューンが収められています。この曲はペイチと離脱したボビーの曲です。ハードとはいえかなり凝ったアレンジで、シンセだけでなく生ホーンも上手く絡めた音の広がりを感じるナイスなロック・チューンです。
どこから流出したのでしょうか、脱退したボビーがボーカルをとっているこの曲の音源がありました。確かにボビーの声です。元々彼の曲ですし、離脱前に録音の割と早い時期に収められてい可能性はあります。『IV』のハードな曲で聴けるボビー節が炸裂しています。とはいえ特にライブで見せた肝心な高音部の不安定さは、それが理由で解雇されたのかと思うほど(私の勝手な見解です)。でもかなり珍しいので、ここでご紹介しておきます。音質は良くありません。
シングルカットされたA3。当時MTVで流れていたロング・バージョンが耳に残っています。後半の「Hey!,Hey!,Hey!」辺りがダヴ・バージョンとなって繋がれていたなと思ったらPVがありましたので、ご紹介しておきます。
そしてキャッチーなロック・チューンA4。ファーギーのボーカルの表現力はさすがジェフが惚れ込んだだけあります。今でも私はこの曲好きです。後半のシンセのオーケスレーションもスティーヴとペイチとの絡みはTOTOの中でも秀逸だと思います。それに絡むルーク節全開のギター・ソロも短いですけどナイスです。ファーギーの勇姿が見れるPVでご紹介しておきます。マイクの田端義夫ポジョンでのベース・プレイも見どころですw。
B1もハードなロック・チューン。とはいえシンセの絡み方はかなりのハイセンスなアレンジです。こうした様々な要素が絡み合う曲がTOTOらしいと言えると思っています。
うるさい曲ばかりの紹介で恐縮ですが、もう1曲B3。「Heydra」を思わせるようなイントロからファーギーのハイトーンが高らかに響くロック・チューンです。後半のボイス・チェンジなどはQueenっぽさも感じられたりして。このままアルバムが終わってもいいかなって思うようなドラマチックな曲です。
こうして改めて振り返ってみると、私はこのアルバム大好きみたいですね(^^)。ゴールドディスクを獲得しているにもかかわらず、USチャートでも42位と評価は低いようです。またせっかく加入したファーギーも、噂ではルークとの不仲が原因で、アルバム1枚で脱退してしまいます。青年期には体操選手としての将来も期待されたファーギーだけあってステージでバク転を披露するなど、フロント・マンとしての魅力もあったのに残念でなりません。
ファーギーはTOTO脱退後はセッション・ボーカリストとして活動していきます。どこかAORっぽい音作りで密かに人気のトミー・テナンダーのユニットのレディオ・アクティヴなどで彼の歌声は聴けますが、2010年には癌を発病して2014年に亡くなられてしまいます。
そして三度ボーカリスト探しとなったTOTOのフロントに抜擢されたのは・・・そんなアルバムのご紹介は次回に。