【名盤伝説】”Maurice White / S.T.”
MASTER PIECE USファンク・バンドE. W. & F. のリーダーモーリス・ホワイトの唯一のソロ・アルバム『スタンド・バイ・ミー(放題)』(1985)です。
バンド休止期間にバンド・ツートップ・ボーカルのフィップ・ベイリーがソロアルバムをリリースしたことに刺激を受けたか受けないかw。自らがリーダーだったバンド活動中はソロ活動を禁止していた手前、自身のアルバム制作には躊躇していたに違いありません。とは言ってもバンド活動が無い中では、ソロで活動するしかありません。
思い腰を上げたかどうかは別として^^;;、モーリスもソロ・アルバムの制作を始めます。時代はエレクトロニクス全盛と強く意識した中で制作したバンドの前作の不調をものともせずに、アレンジャーには当時最先端のシンセ・サウンドの使い手のロビー・ブチャナンを起用します。他にもシンセ・プレイヤーとして人気のマイケル・ボディッカーや新進気鋭のキーボーディストのジェフ・ローバーなども参加しています。
生陣営としてはポール・ジャクソンJr (G)、エイブラハム・ラボリエル(Bs)、ジョン・ロビンソン(Drs)、マイケル・ランドゥ(G)、ポーリニョ・ダ・コスタ(Perc)などの名前もクレジットされています。
アルバムトップを飾るのは何ともエレクトリックなファンクA1。バンド前作の延長線上といえるナンバーです。
ダンサブルなポップナンバーのA2。後にディヴッド・コズらと活動するジェラルド・アルブライトのサックスが全面にフューチャーされています。
ベン・E・キングのスタンダードのカバーA3。生リズム隊によるハネてるグルーヴが心地よいです。
まるでイントロのような小曲に続く壮大なバラードA5。バンドではこうした曲調はフィリップのファルセット・ボイスの担当だっただけに、モーリスの歌は新鮮に聞こえます。バックのオーケストラやストリングスが全てシンセが担っていることを思うと、エレクトリックなアレンジの可能性を感じます。とはいえ似せるなら本物使えば良いのにとも思ったりして。アースの方なら予算もあるのにねと。
ラブリーなポップス・チューンB2。この曲もオーケストレーション以外は生リズムです。アースでは出来ない様々な実験をしているように思えてきました。
組曲のような展開が楽しいアフリカンなB5。TOTOの大ヒット「アフリカ」(1982)を思わせるような曲調です。ピーター・ウルフによるリズム・プログラミングに被さる生ドラムはヴィニー・カリウタでした。プロデューサーとしてのモーリスの意地の1曲って感じです。
シンセ・アレンジを基調とした作品が並んだモーリスのソロ作品。悩めるコンポーザーのチャレンジングな作品集かなということで。
ちなみにアースは1987年の『タッチ・ザ・ワールド』でバンド活動を再開しますが、正直もう過去のバンドになったかなという印象でした。そういう意味では、このモーリスのソロは偉大なファンク・バンドとしてのアースのエピローグのようなアルバムのような気もしてきます。
そして90年後半にはモーリスはパーキンソン病を煩い、音楽活動も停滞気味となり、2004年には現役引退し、2016年には帰らぬ人となりました。一つの時代を彩った偉大なミュージシャンだったということには違いありません。このアルバムも含めて、彼の作品を大切に聴き続けていきたいものです。R.I.P.
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