【名盤伝説】”Boston / S.T. (幻想飛行)”
MASTER PIECE お気に入りのミュージシャンやその作品を紹介しています。1976年にリリースされたボストンのデビュー・アルバム『幻想飛行』です。
MIT出身で音楽好きな技術お宅wのトム・シュルツが卒業後に技術者として勤務する傍ら、自宅のガレージで自作のアンプやエフェクターを使い宅録に勤しんでいたといいます。私財を投じて自宅にスタジオで制作されたデモ・テープがCBSレコードに認められプロ・デビューへの道を歩みだします。
そのデモ・テープの完成度があまりに高く、アルバム制作はプロ仕様の品質で再現することに注力されたとのことです。さらにプロモートのためのライブも考慮して、急遽メンバーのオーディションが行われてバンドとしてのボストンが動き出します。
オリジナルメンバーはトム(Vo, G, Key)のほかにブラッド・デルプ (Vo, G, Key) 、フラン・シーン (Bs) 、シブ・ハシアン (Drs) 、バリー・グドロー (G) 。
緻密に織りなすでポップでキャッチーでシンプルな構成のロック・サウンド。受け線狙いの商業主義的な音楽と揶揄されることも多いですが、リスナーには関係ありません。素直にかっこいいということに対しての僻みですね。
スペイシーなアコギのアルペジオから始まるM1。幾重にも重なるハードなギターも美しいメロディとボーカルのハーモニー、アレンジに凝りまくるトムのこだわりが詰まった、まさにこれぞボストンのサウンドを象徴する極上のロック・ナンバーです。
同時代の様々なロック・アルバムと比較しても、ここまで色の付いていないのは少ないです。どこかに必ず何かの色がついています。ブルースだったり、フォーキーだったり、クラシックだったり・・・。それが特徴でアルバムの持ち味だったりしますが、そんな持ち味を敢えてシンプルでストレートな純粋ロックに振り切った潔さは、素直にロック・ファンの心を捉えたと言えるのではないかと感じます。
アコギのストロークから始まるM2。ウエストコースト風なニュアンスを感じさせる間もなくダブル・ノートの歪んだギターが響きノリノリ気分にさせてくれます。後半の3色のギターが絡むソロ回しなど、ロックの美味しいとこ取りというようなナンバー。素直に格好良いです。
ヴギーなギター・リフで煽りまくるM5。多少色が出てきましたねw。とはいえ後半のキーボード・ソロなどはシンプルなギター・サウンドで押しまくる他のバンドとは一線を画します。敢えてクラシカルなオルガン・サウンドをはめてくるあたりはパーブルなど伝統的なハードロックへのオマージュさえも感じさせます。ところが続くハープシコード風のシンセを絡ませるなど、本当に美味しいとこ取りというかズルいです。ステージのラスト・ナンバーとしても定着していたようです。
こんな素敵なロック・アルバムが売れないはずがありません。USチャートで3位を獲得。142週連続チャートイン。全世界で2,000万枚を売り上げたとされます。
当時のロック・ファンの心を鷲掴みにしたボストン。こだわりのアルバム作りのためか次回作リリースまで間が開きます(1978年)。他のバンドが下手すれば年に2枚リリースしていたことを考えると、悠長なプロモートとも感じますが、作り込まれた緻密なサウンドで何度聞いても飽きのこないという、噛み締める喜びを堪能させてくれたのかなとも思います。
その後に言われる「産業ロック」とか、今で言うところの「アリーナ・ロック」とかの先駆けとして、ボストンの功績は大きいと思います・・・ちなみにこれらの表現は、いずれも私は苦手です。この言葉が用いられる文脈に、ミュージシャンやアルバムをどこか卑下するようなニュアンスを感じてしまうからです。
売れなければ次回作は無い訳ですし、大規模会場で大観衆がわいわいと楽しむロックの何が気に入らないのでしょうかと・・・この位にしておきます^^;;。
ボストンの飛躍は次のアルバムにも続きます。
1970〜80年代の洋物ROCK系の記事を紹介しています。宜しければどうぞお立ち寄りください。