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【名盤伝説】 ”David Pack” 魅惑のメロディ・メイカー名作列伝

お気に入りのミュージシャンとその作品を紹介しています。アメリカ発のプログレバンド?AMBROSIAのリードボーカル、デヴィッド・パックです。

学友同士だったパック(G, Vo, Key)とジョー・ブエルタ(Bs)がバンドを結成。後にクリストファー・ノース(Key, Vo)とバーレイ・ドラモンド(Drs)が参加して、1971年にアンプロージアが結成されます。パックのキャリアはここから始まります。

1975年にデビューアルバム『Ambrosia』、1976年には『Somewhere I’ve Never Travelled』(1976)をリリースします。オーケストラを多用したブログレッシヴ・ロックで、制作にはUKの重鎮アラン・バーソンズが関与して完成度は高いものの、2作とも評判は今ひとつでした。

その後オリジナル・メンバーのクリストファーが脱退。しかも所属レコード会社が倒産するなどバンドは解散の危機を迎えますが、メジャーのワーナーとの契約が成立し、起死回生の作として『Life Beyond L.A.』(1978)をリリースします。すると収録曲でパックがリードボーカルをとる「How Much I Feel」が何と全米19位を記録する大ヒットとなりました。
パックの才能に世間が注目し始めた作品といえます。

アルバム全体は相変わらずのプログレ指向で、シンセサイザーを多用するオーケストレーションが特徴ですが、パックがリードボーカルをとるこの曲は、唯一メロディアスで、時代のAORを代表するバラードといえるほどの出来となっています。

そしてバンドは路線をややポップな方向に転換した『One Eighty』 (1980) をリリースします。主要メンバーはそのままに、サポートメンバーを充実させて6人編成としてバンドをリニューアル。アルバムタイトルも「180度転換!」ですが、相変わらずのプログレ臭は拭いきれません。

案の定?パックがリードボーカルをとるAORなスローなナンバー「You’re the Only Woman」(全米13位)と「Biggest Part of Me」(全米3位)が世間には受け入れられてしまいます。

バンドの思惑とは異なり、この2曲がまた極上のAORナンバーとしてファンには絶大な支持を得てしまいます。おかげでバンド活動が継続できるのですから、仕方の無いことなのでしょうか・・・

それでもプログレ指向を諦められないメンバーは1982年に『Road Island』をリリース。プログレ本場のロンドン録音で、Pink Floydの名作『Wall』の共同制作者を迎え入れた執念の作品ですが、見事に惨敗。セールスも振るわずバンドは解散に追い込まれてしまいました。

ところがパックのコンポーザー、シンガーとしての才能を業界は黙っていません。バンド解散後、パックはQuincy Jones が主宰するQUESTレーベルでキャリアを継続することになります。

そして1985年にソロアルバム『Anywhere You Go』をリリースします。時代のエレクトリックなテイストを施しながらも、ポップでメロディアスな楽曲が並びます。

ミディアムテンポながらも、相変わらずのボーカルセンスで歌い上げるパワーバラードのタイトル曲M1「Anywhere You Go」

さらにM2「I Just Can’t Let Go」、M5「That Girl is Gone」のメロディセンスの良さは秀逸です。

このアルバムの参加ミュージシャンも、マイク・ポーカロ(Bs)、ジェイ・ウィンディング(Key)、ジェイムス・ニュートン・ハワード(Key)、ジェイムス・イングラム(Cho)、アーニー・ワッツ(Sax)、ジョン・ロビンソン(Drs)など。LAクィンシー人脈ががっちり支えています。元のバンドメンバーも友情出演しています。

その後もパックは様々なミュージシャンのアルバムに楽曲を提供するなど、コンポーザーとして活動しています。また未発表曲集などのCDもリリースされていますが、彼自身の作品としては、やはりこの時期の楽曲の良さはとびぬけているように感じます。

1989年にバンドは再結成されますが、パックは参加していません。しかしステージでは「Biggest…」や「How Much…」は今でも、そう、今でも活動は継続していて、これらの楽曲は相変わらず大人気です。

バンドの指向とは全く異なるテイストが受け入れられたことが不幸なのか幸運なのか・・・ファンとしては自分の好みで聴き続けるだけですからね。

[追記]
もう一つおまけのネタを。フュージョン系のサックス奏者が奏でる企画アルバムJohn Tesh ProjectSAX ON THE BEACH』(1995)に、ハワイのAORバンドで有名なカラパナのサックス奏者Michael Pauloをフューチャーして「The Biggest Part of Me」が収録されています。単なるインスト・カバーかと思いきや、何とパック本人がコーラスで参加しています。コーラス・パートナーは極甘ボイスのフィリップ・イングラム。アルバム・タイトル通り、夏の海岸に響けばピッタリの雰囲気です。YouTubeに音源がありました。やっぱり神であり沼ですね。

※ References to A.O.R. Club Magazine Vol.8 & Vol.17


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