【名盤伝説】”TOTO / IV”
MASTER PIECE USロック・バンドTOTOの4枚目のアルバム『TOTO IV (聖なる剣)』(1982)です。
1978年にアルバム『TOTO』でデビューしたTOTO。デビュー作は順調なセールスを記録して上々の立ち上がりでしたが、その後バンドの音楽性を模索する中でレーベルからは厳しい評価を受けてしまいます。
メンバーはデビュー当時から変わらず、デヴィッド・ペイチ(Vo., Key)、ジェフ・ポーカロ(Drs)、スティーヴ・ルカサー(G., Vo)、デヴィッド・ハンゲイト(Bs)、スティーヴ・ポーカロ(key)、ボビー・キンボール(Vo)の面々。いずれもファースト・コールの実力派スタジオ・ミュージシャン集団。バンド活動を続けながらも様々なレコーディングに参加しています。
1981年リリースのサード・アルバムでのプログレチックなハード・ロック路線はファンには受け入れられたものの期待されたセールスが伴わず、崖っぷちに追い込まれたとメンバー自身が語っています。次回作が転けたら元のセッション・ミュージシャンに戻るしかないとの不退転の覚悟でバンドは新作に取り掛かります。
アルバム制作で最初に取り組んだのがこのA1。キャッチーでポップス・センスに溢れるロック・チューンはペイチのコンポーザーとしての才能を感じます。ちなみに「ロザーナ」とは特定のモデルはいないようです。TOTOには女性の名前の曲が多いです。ま、彼らのサガということで(苦笑)。ボーカルはペイチとルークです。
ファースト・シングルとしてカットされてUSチャートで5週間連続2位、UKチャートでも12位を獲得。年間チャートでもUSでは14位と大ヒット。メンバーの胸を撫で下ろす顔が浮かびます。その後1983年のグラミーでも優秀レコード賞を受賞します。
この曲は、スタジオに集まったメンバーの前でペイチがデモテイクを奏でながらイメージを膨らませていると、「リズムはもう少し跳ねる感じが良いかも」とジェフがイメージとしてスティーリー・ダンの「バビロン・シスターズ」とかレッド・ツェッペリンの「フール・イン・ザ・レイン」をあげたそうです。なるほどのノリですね。今ではジェフの代表的なプレーと言われる独特なシャッフル・ビートはこんな経緯で生まれたというのも興味深いエピソードです。
三連のピアノ・リフが特徴的なA2。1stアルバム収録の「Hold The Line」の続編なのだそうです。ヘッドホンで集中して聞いているとステイーヴの入魂のシンセテクが楽しめます。
泣きのバラードA3。コンサートでも人気の曲で、数々のルークのギター・ソロの中でも秀逸な出来かと思います。
ポール・マッカトニーの「死ぬのは奴らだ」のようなオーケストレーションに挑戦してみたかったとルークが語るB1。後半のシンセと生オーケストラとの掛け合いはすごいです。ライブでも盛り上がりの曲ですが、ぜひスタジオ録音テイクも楽しみたい曲です。
レコーデイングも一通り終えたところで、もう一曲入れないかとして制作したのが世紀の名曲に!!。アルバムラストのB5はそんな経緯から生まれたのだそうです。アルバムから3枚目のシングル・カットで初の全米ナンバー1を獲得。バンドの代表曲となっています。メンバー全員アフリカなど行ったことも無いし、「ここはLAなのに何でアフリカなんだよ」とほとんどふざけたノリで作られたといいます。そんなリラックスした状態だからこそのアイデア満載のナンバーになったのですね。聴けば聴くほど様々な仕掛けに気づきます。独特なシンセ機材はYAMAHA製で、この機材が無かったらこの曲のイメージは浮かばなかったと作曲のペイチは語っています。
TOTOの主なコンポーザーとしては断然ペイチということになりますが、このアルバムではジェフの才能も光っています。B1・B3・B5で彼の名前がクレジットされています。リズム・マエストロのジェフの多彩な才能に驚かされます。
アルバム制作終了とともにオリジナル・メンバーのハンゲイトがバンドを脱退します。バンドとしてツアーに出ていると家族との時間が取れないというが理由なのだそうです。代わりに加入するのがポーカロ兄弟次男のマイク・ポーカロです。より一層ファミリーのようなバンドの結束が強まることになります。
アルバム制作時点ではほんのワン・パートしか参加していなかったマイクですが、ハンゲイト脱退後に制作されることになったPVでは、逆アテレコですが堂々とメンバーとして映っています。
アルバム・リリース直後に行われた来日公演でもマイクが堂々の出立ちでプレイしていました。バンド全体の演奏はかなりワイルドでしたが、約2時間に及ぶステージは圧巻でした。このタイミングで生TOTOを体験できたのはラッキーでしたね。
アルバムは大成功を収めて彼らの首の皮も繋がりw、その後のバンドの活動に勢いがつきます。ファーストからこの『IV』までの期間のアルバムも好きですが、個人的にはその後の作品も大好きです。TOTO黄金期の始まりです。
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