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【名盤伝説】”TOTO / Fahrenheit”

MASTER PIECE USロック・バンドTOTOの6枚目のアルバム『Fahrenheit』(1986)です。

アルバム『TOTO IV』(1982)の成功でバンドとしての地位を確かなものとしたTOTOでしたが、次作のレコーディング直後にオリジナル・ボーカリストの脱退というアクシデントに見舞われ、急遽加入した二代目ボーカリストもアルバム1枚限りでバンドを離れることとなり、短期間に三度ボーカリスト探しをしなければならなくなり、せっかくの上昇気運に水を差されてしまいます。

そんな中で大物ブラス・バンドのシカゴに新加入したジェイソン・シェフジェフ・ポーカロに改めて紹介したのがきっかけで、LAロック・シーンで燻っていたジョセフ・ウィリアムスにチャンスが巡ってきます。

ジョセフはスターウォーズなどで有名な映画音楽の大家ジョン・ウィリアムスの息子として、80年代初頭からコンポーザーとして活動を始め、1982年にはソロ・アルバムをリリースしてレコード・デビューしています。

その後の彼の活動ははスタジオ・セッションや楽曲提供など裏方稼業が中心ではあるものの、血筋もあってかLAロック・シーンでは知られた存在で、TOTOのメンバーとも交流がありました。そんな中で「そうか彼がいた」と改めてオーディションの末バンドへの加入が決まります。

収録曲
A1 Till The End
A2 We Can Make It Tonight
A3 Without Your Love
A4 Can't Stand It Any Longer
A5 I'll Be Over You
B1 Fahrenheit
B2 Somewhere Tonight
B3 Could This Be Love
B4 Lea
B5 Don't Stop Me Now

アルバムトップのA1。いかにもTOTOらしい軽快なロック・チューンです。曲はデヴィッド・ペイチとジョセフの共作。単にキャッチーなだけでなくメロディアスであり、四角かりと聞かせどころもあるという二人のコンポーザーとしての才能の高さを感じさせるナンバーです。PVは・・・みんな別人のように若いぞ!!^^;;


この曲のキモはホーン・アレンジでジェリー・ヘイのセンスの良さが光ります。ライヴなどでのパフォーマンスではシンセ担当のスティーヴ・ポーカロの技量に負うところが多いのですが、彼曰く、毎日鍵盤の前で新しい機材のマニュアルばかりを眺めている自分に嫌気が刺したと。ここまでド派手なホーンを再現することには、どんなシンセ使いの名手でもハードル高いよなと思います。

もう一つ気になったのはスティーヴ・ルカサーのギターエフェクト。前作までと使う機材を一新したのでしょうか、全く違うレゾナンスを感じます。音の輪郭をギリギリまでぼかす空間処理に、フレーズは間違いなくルークだけど音色が…と戸惑ったギターキッズは多かったはず。個人的には今までの音の方が好みですけどね。


そんなギターが全面に鳴り響くA4。ちょっとレゲェっぽいロック・ナンバーです。A1よりも以前の音に近いのですが、やはり空間系のエフェクトに違和感を感じます。常に同じ音を鳴らし続けることに意味はありませんが、チャレンジした評価は好みの問題かなと思います。この曲もペイチとジョセフ、そしてルーク3人によね共作です。ブリッジのシンセ・オーケストレーションはスティーヴ入魂の音作りですね。


この曲のPVはこんなのだったのですね。まるでビートルズの伝説のルーフ・トップ・パフォーマンスを彷彿とさせる演出でした。名曲A5。TOTOのバラードでも人気ナンバー・ワンなのではないかと思います。こうしたバラードは何故かルークがボーカルって多いように思います。コーラス隊に何気に映るマイケル・マクドナルドに思わず目が止まります。


ミディアム・テンポのパワー・バラードB3。コーラスに前のボーカリストのファーギー・フレデリクソンがクレジットされています。この曲もペイチとジョセフの共作。初参加なのにこれだけの曲が採用されるジョセフの才能は凄いです。


地味な小曲ですが隠れファンの多いB4。確かベスト盤にも収録されていた気がします。Saxの名手デヴィッド・サンボーンの音色がサビのバックで静かに流れます。このアルバムを最後にバンドを離れるステイーヴ・ポーカロの曲の惜別の逸曲のように感じます。


そして実はアルバム最大の話題曲B5。アルバムラストの小曲ということで言われなければ流してしまいそうですが、余韻に浸って聴いているといきなり響くトランペットの音色に「おおお」っとなります。伝説のジャズ・トランペッターのマイルス・デイヴィスとのまさかの共演が実現します。ステイーヴ・ポーカロ作の名曲「ヒューマン・ネイチャー」をカヴァーするためにスタジオに向かっていたマイルスに、製作中の新作にダメもとで吹いてくれないかと依頼すると、何とOKということでワン・テイクだけ録音させてくれたのだといいます。しかもノーギャラだったというおまけ付き。TOTOの才能を神様も認めていたということでしょうかね。


バンドデヴュー以来、アルバム制作にツアーそしてスタジオ・セッションと休み無しに続く活動に、メンバーの疲労はピークだったようです。そんな中でオリジナル・メンバーのステイーヴ・ポーカロも、このツアーを最後に脱退します。とはいえ新加入のジョセフとTOTOサウンドの親和性は抜群で、ファンの期待は高まりますが・・・こんないきなりの大活躍が、後に思わぬ軋轢を生むことになろうとは、この時には誰も想像だにしなかったということで。

TOTO伝説はまだまだ続きます。



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