【名盤伝説】”鳥山雄司 / Silver Shoes”
MASTER PIECE 日本のギタリスト、アレンジャーとして活躍している鳥山雄司のセカンド・アルバム『シルヴァー・シューズ』(1982)です。
鳥山は1959年神奈川県に生まれ、大学在学中に自身でプロデュースした『テイク・ア・ブレイク』(1981)でデビューします。時代のニュー・ミュージックとは一味違った音楽センスで人気だった兄弟デュオのブレッド&バターや南佳孝などとも交流するなど実力派ミュージシャンとして注目されていました。
そんな彼がデビューアルバム・リリース直後の六本木ピット・インでのライヴに、たまたま来日公演中だったラーセン・フェイトン・バンドのニール・ラーセンがバンド・メンバーのレニー・カストロと訪れたのだそうです。客席にいるニールらを目ざとく見つけた鳥山は大胆にも飛び入りで演奏しないかと申し入れ、何とニールも快諾して夢のようなセッションが実現します。
意気投合した彼らは、後日鳥山のプロデューサー氏と共に公演の楽屋を訪れ、ニールからの社交辞令で「ロスでレコーデイングしよう」との話にその場でOKして、何とも冗談のような展開でLA録音が決まってしまいます。そうして制作されたのがこのアルバムです。
メンバーにはキーボードのニールの他にラーセン・フェイトン・バンドのバジー・フェイトン(G)、アート・ロドリゲス(Drs)、パーカッションのレニー、ベースはイエロー・ジャケットのジミー・ハスリップといった、まさにラーセン・フェイトン & ユージといった顔ぶれです。
あまりの急転直下のレコーデイング話に曲が足りず、半分は現地で書いたという急ごしらえ。ところがこうした追い込まれた中での曲って、案外良い曲が多いんですよね。
現地入りしたLAのホテルで缶詰になって書き上げたというA1。ゆったりとしたリズムにアグレッシヴなギターが意外なコントラストで良い感じです。バックの面々の安定したクルーヴがあってこそって感じですね。
鳥山の得意技でもあるギター・カッティングが冴えるタイトル曲B1。このテンポ感はラーセン・フェイトン・バンドもお得意のノリ。初めて聞いた時には誰がバックか知らず、改めてメンツを見てなるほどなと納得したことを覚えています。
ニール提供のB3。このコード進行はまさにニールだなぁという感じです。ジミーのスラップも嫌味なく溶け込んでいます。時代のフュージョン・サウンドですね。
そしてバジー提供のスローなバラードのB4。前作は正直音作りがやや古いなと感じていましたが、このアルバムで一気に垢抜けましたね。このサウンドの空気感は私にとってはメチャ心地よいです。
その後の鳥山は、ギタリストとしてだけでなくアレンジャーとしても活躍します。中森明菜、松田聖子といった時代の実力派アイドル・シンガー??やシャ乱Q、吉田拓郎、郷ひろみ、宇多田ヒカルなどJ-POP界には無くてはならない存在となります。裏方ですけどね。そして現在は山下達郎のツアー・メンバーにも抜擢され、私と同年代で年金受給年齢になっているにも関わらず、更にその活動の場を広げているとは凄いです。
人生、幾つになっても活躍できる場はあるものです。定年だとかリタイアだとか言ってる場合じゃありません。皆さんも健康にはお気を付けて、益々のご発展をお祈り申し上げます。