【名盤伝説】“Yes / Close to the Edge”
お気に入りのミュージシャンとその作品を紹介しています。UKプログレ界伝説のバンド、イエスの5作目のオリジナルアルバム『危機 (邦題)』です。
イエスは1969年に『イエス・1st アルバム』でデビューします。当時のメンバーはクリス・スクワイア(Bs)、ジョン・アンダーソン(Vo)、ビル・ブルーフォード(Drs)、ピーター・バンクス(G)、トニー・ケイ(Key)の5人編成。この頃の音楽性はプログレというよりもサイケデリック・ロックという評価が多いようです。
そもそもプログレッシヴ・ロック(プログレ)とはなんぞやということになりますが、標準的な解釈を私は知りません。長尺で哲学的で難解な歌詞と、何故かクラシックのようなメロディやアレンジが含まれていて、ちょいインテリ的な雰囲気を醸し出したり、小難しい顔して音楽を語る人種に好まれた音楽とでも言いましょうか・・・
音楽の聴き方は人それぞれ自由であって良いと思うので、どんな解釈をしようが勝手ですが、個人的にはシングル曲では表現しきれない壮大なテーマと物語性を感じさせてくれる音楽ってところでしょうか。アルバム・オリエンテッドなミュージシャンの作品がショート・ショート作品集だとすれば、同じアルバム指向でも長尺作品を含むと、どうしてもプログレっぽくなるのかなと思います。
1970年にピーターの代わりにスティーヴ・ハウ(G)が加入。1971年に『イエス・サード』アルバムがリリースされます。
そして71年のツアー終わりでトニーからリック・ウェイクマン(Key)が参加した編成となります。
このメンバーで1972年に『こわれもの (原題: Fragile』がリリースされ、続く72年にリリースされたのがこの『危機』です。
ジャケット・デザインは前作に続いてUKのデザイナーのロジャー・ディーン。壮大で幻想的な世界観を緻密に表現する作風が人気です。
レコーディングにまつわる経緯やエピソードについてはWikiや他のnoterさんが詳しく記事にされているので、そちらをご覧いただければと思うのですが、かなりハードなセッションだったようです。あまりの厳しさに「もう、崖っぷちのようでやってらんないよ (Close to the edge)」という発言がアルバムのタイトルになったとかならなかったとか。
この小難しいタイトルからも一体どんな音楽なのかって感じですが、構えず素直に抒情詩でも嗜むように触れると、元々英語が分からない多くの邦人ロック・ファンにはロック・バンド編成によるクラシックの交響曲でも聴いているような、そんな楽しみ方ができると思うのです。当時中学生だった私には歌詞は当然聞き取れず、対訳を読んでも意味不明。やたら長いけどかっこいいなぁといった程度でした。
小鳥のさえずりや水辺の音などのSEがふんだんに盛り込まれているので、何となく夏に聴くと良いかもと感じます。
個人的には、この時期のアルバムがイエスの全盛期だと思っています。従来の様式に拘らない試みに溢れた作品群・・・あ、それが進歩かどうかは別としても(汗)、新しさを感じるということでプログレなのですね。
イエスの来日公演は何度観に行ったか分からないくらい観てますね。ボーカルのジョンの優しげな微笑み、スティーブの職人的な指さばき、今は亡きクリスの巨大な体型から繰り広げられる強烈なベースライン、中世の王子様のようなリックの出立ちなど、本当に特徴的なバンドだったと思います。今もイエス名義でバンドの活動は継続していますが、個人的にはもう思い出のバンドになってしまいました。
1970年代の洋楽ロックの記事をこちらでまとめています。プログレ関係の他のバンドの記事も紹介していますので、どうぞお立ち寄りください。