
【名盤伝説】”Roberta Flack / I'm The One”
MASTERPIECE お気に入りのミュージシャンとその作品をご紹介します。先日惜しくも亡くなられたロバータ・フラックの『アイム・ザ・ワン』(1982)です。
ロバータといえば1972年のダニー・ハザウェイとの『Roberta Flack & Donny Hathaway』、73年の『Killing Me Softly (やさしく歌って)』、74年の『Feel Like Makin’ Love (愛のためいき』辺りが人気かと思います。
楽曲の良さは当然として、彼女のシンガーとしての卓越した技量や共演するボーカリストとのとろけるようなダヴル・ヴォイスに酔うという意味では、どれをとっても秀逸な作品ばかりだと思います。
改めて彼女のアルバムをバックアップしていたラインナップに注目してみると、80年代に大人気になるフュージョン系のミュージシャンが多数参加していることに驚かされます。そしてその流れの頂点に、このアルバムがあるように思えます。

プロデュースはラルフ・マクドナルドで、ロバータ&ダニー・ハザウェイのアルバムでも楽曲提供している他、パーカッショニストとして様々なアルバムに参加しています。そして何と言ってもあのメロウなフュージョンサウンドで大ヒットしたグローヴァー・ワシントン Jr. のアルバム『ワインライト』(1980)をプロデュースして、収録曲の名曲「ジャスト・ザ・トゥ・オブ・アス」の作者でもあります。
そんなラルフが集めたミュージシャンなので間違いありません。マーカス・ミラー(Bs)とスティーヴ・ガッド(Drs)、バディ・ウィリアムス(Drs)の鉄壁のリズム隊にエリック・ゲイル(G)、リチャード・ティー(Key)、ボブ・ジェイムスやフェリックス・キャバリエ、デイヴ・グルーシンなどのアルバムにも参加しているエド・ウォルッシュ(Syn)。そしてグローヴァーもサックスで、ラルフ自身ももちろんパーカッションで参加しています。
収録曲
A1 I'm The One
A2 'Till The Morning Comes
A3 Love And Let Love
A4 Never Loved Before
B1 In The Name Of Love
B2 Ordinary Man
B3 Making Love
B4 Happiness
B5 My Love For You
収録曲のうち4曲はラルフ、その他には前作で競演したピーポー・ブライソン、AORの帝王ボビー・コールドウェル、そしてバート・バカラックとキャロル・ベイヤー・セイガー、さらにブレンダ・ラッセルと楽曲提供も豪華すぎて眩暈がします。
A1 アルバムのタイトル・ナンバーはいきなりフュージョン・テイスト全開です。メロウな大人のアルバムが始まったって感じです。
A4 ボビー・コールドウェルとボビーの公私にわたる理解者だったヘンリー・マークスとの共作によるバラード。言われてみればボビー節が随所に聴けますね。
B3 バート・バカラックとCBセイガー(当時も夫妻?)によるナンバー。この曲だけバックはニール・スチュベンハウス(Bs)、ジム・ケルトナー(Drs)、リー・リトナー(G)、ポーリニョ・ダ・コスト(Perc)などの西海岸系が参加 (ピアノはリチャード・ティーですけど)。超絶スィートなバラードです。
眼を閉じて聴いていると、ニュー・ヨーク・テイストのまさしく「ワインライト Part2」のような佇まいです。表現力豊かな伸びのあるロバータの歌声を楽しみつつ、改めて彼女の業績を忍びたいと思います。 R.I.P.