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【名盤伝説】”Steve Kipner / Knock the Walls Down”
MASTER PIECE US出身のSSWスティーブ・キプナーのソロ・アルバム『ノック・ザ・ウォールズ・ダウン』(1979)です。
1950年US生まれのスティーブは、オーストラリアで音楽のキャリアをスタートさせます。1968年にイギリスに移住してTin Tin というバンドに参加して、1971年には「Toast And Marmalade For Tea」という曲でヒットを記録しました。そして1974年にカリフォルニアに拠点を移し、多くのバンドと共演しています。1981年にはオリビア・ニュートン・ジョンの「フィジカル」の作者として大成功を収めることになります。
そんな彼の唯一のソロ・アルバムがこのアルバムです。
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このアルバムは、あのジェイ・グレイドンが初めて全面プロデュースした作品として知られています。ジェイはこの年にマンハッタン・トランスファーの『エクステンションズ』やマーマ・ジョーダンの『プルー・デザード』など、AOR名盤を次々と制作していきます。
このスティーブのアルバムにはAORファンなら思わず唸ってしまうミュージシャンが多数参加しています。デヴィッド・ハンゲイト(Bs)、ジェフ・ポーカロ(Drs)、マイケル・オマーティアン(Key)、グレッグ・マティソン(Key)、ディーン・パークス(G)、デヴィッド・フォスター(Key)、バッキング・ボーカルにはビル・チャンプリン、ボビー・キンボール、トム・ケリー、ヴェネット・ゴールド・・・。以降のジェイ制作のアルバムの常連達が名を連ねています。
収録曲
A1 The Beginning
A2 Knock The Walls Down
A3 Lovemaker
A4 School Of Broken Hearts
A5 War Games
B1 I've Got To Stop This Hurting You
B2 Love Is It's Own Reward
B3 Cryin' Out For Love
B4 Guilty
B5 The Ending
ラリー・カールトンのアコギが聴けるタイトル曲A2。キプナー作ですが、どこかピーター・アレンっぽい歌い方と曲調のように感じています。フォスターのエレピも実に良い感じです。コーラスはJ.C.クロウリーとピーター・ベケットということで「ベイビー・カム・バック」のPLAYERのお二人が参加です。
連作となっているA1とB5。キレの良いジェフのドラミングとドラマチックなキーボードが特徴のアルバム序曲としてのA1。そして求愛の終焉は永遠の愛の始まりというアルバム最後のB5では、これでもかというジェイの1:49にも及ぶ超長尺ソロが聞きどころです。この年のジェイ制作の他のアルバムで、どこか聞いたことのあるようなリフが連発です。この2曲を繋げた音源がありましたので、紹介しておきます。
そんな恋愛ストーリはジャケットのアートにも表現されていて、表ジャケでは花束を手に襟元を正す姿。裏ジャケでは扉に鍵がかかっているのならと壁をぶち破り、インナーでは無事に彼女の心を掴んだハッピー・エンドという仕立てになっています。分かりやす過ぎてとても凝っているとまではいえませんが、ま、そういうことでw。
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時代はまさにAOR全盛期です。実力派ソングライターの唯一の作品というよりも、当時のコンテンポラリー・ミュージックをリードしたジェイのプロデューサー人生の船出の作品という意味で、ファンの方なら必ず押さえてほしい1枚です。
AORな作品をこちらで紹介しています。よろしければどうぞお立ち寄りください。