【名盤伝説】“Patti Austin / Every Home Should Have One” ジャズ・ボーカルに隠れたソウルフルな気質を見抜いた巨匠の慧眼に拍手。
お気に入りのミュージシャンとその作品を紹介しています。R&B界の巨匠クィンシー・ジョーンズがその才能を見抜いた、稀有のパワフル・シンガーパティー・オースティンのQwestレーベル移籍第一弾『Every Home Should Have One (邦題: デイライトの香り)』(1981)です。
パティは1949年US出身の女性シンガーで、幼い頃からテレビやラジオ番組で歌うなど活動していたそうです。名匠クィンシーとの出会いは、まだ彼女が10歳の時。以降クィンシーの秘蔵っ子として大切に育てられます。
1976年にジャズ・ボーカリストとして初のソロアルバム『End of a Rainbow』をリリース。その中からシングル「I'm in Love」がスマッシュヒットしました。以降も彼女は数枚のアルバムをリリースしますが、満を持してクィンシー主宰のQwestレーベルに移籍。1981年にこの作品をリリースします。
プロデュースとアレンジはもちろんクィンシー本人が手がけ、参加ミュージシャンには、ベースにルイス・ジョンソン、アンソニー・ジャクソン。ドラムにはクリス・パーカーにジョン・ロビンソン。キーボードはリチャード・ティにグレッグ・フィリングゲインズ、ボブ・ジェームス、デヴィッド・フォスター、ロッド・テンパートン、マイケル・ボデッカー。ギターにはスティーヴ・ルカサーにエリック・ゲイル。ホーン・アレンジはジェリー・ヘイ・・・さすがクィンシーと言わんばかりの、ジャズやR&B界だけではない東西一流のミュージャンが大集結です。
アルバムのハイライトは何といってもM1。ルイス・ジョンソンのベンベン・チョッパーとルークのロック魂全開のギター・ソロが聞きどころ。当時、日本のディスコでも大人気のナンバーだったそうです(私はリアル世代ですが、ディスコ遊びには縁が無かったので…)。そして同じくクィンシー御用達のシンガージェイムス・イングラムとのデュエットM5。これだけ歌の上手な二人のデュエットで歌い上げられるラヴ・バラードの濃いことといったら、甘酒に蜂蜜とカルピスの原液を入れて飲むような、ベタベタな甘さが後を引きます。この曲はビルボード・ホット100でナンバー1を獲得しています。スタンダーなカバーM7もクインシーによる小粋なアレンジで素敵です。
そしてタイトル曲M4。いかにもロッド・テンパートンらしいタイトなリズムながら、リチャード・ティのローズピアノに、シンセは贅沢にボブ・ジェームスとグレッグのダブルシフトという豪華なバッキング。そこに業師アーニーのテナー・ソロとくれば悪いはずがありません。
ところがこの曲、当初のLP盤と後にリリースされたCD盤とでは、特に後半のアーニーのソロ部分のテイクが全く違います。このアルバムは好きで聞き過ぎていたため、この部分の違いにはすぐに気付きました。改めて聞くと、シンセのオーバダヴもLP盤のテイクはシンプルかなと。実はレコーデイング途中のアーリー・テイクなのかもと勝手に推測してしまいます。あくまで推測ですけど。
ということで上記のフル音源にも含まれていますが、改めてCD盤の音源をお聞きください。
そしてLP盤の音源はこちら。
ね。ソロの違いは一目ですよね。(一耳ですか^^;;)
アルバム全体としてはポップスやR&Bの要素が取り入れられ、当時の音楽シーンで大きな成功を収めた作品といえます。パティのファンだけでなく、R&Bファンにも嬉しい一枚となったに違いありません。
当時のディスコの定番だった「愛のコリーダ」(この曲のボーカルはパティ)のヒットを引っ提げて、コンポーザー&プロデューサーとしての実力を披露した1981年のクィンシーの来日公演にもパティは当然同行して、ジェイムス・イングラムとの熱烈デュエットを聞かせてくれました。
パティはクィンシーのもとでアルバムを3枚リリースします。こちらのアルバムも私は大好きです。個人的にはアダルト・コンテンポラリーなサウンドの最高峰という評価です。
その後はジャズ・フュージョン・レーベルのGRPに移籍して活動を続けます。キャリアを重ねるごとに纏ってきたボディの脂肪も、さすがに近年は妖艶な熟女スタイルとなっているようです。いつまでもパワフルなボイスを聞かせて欲しいシンガーの一人です。