【名盤伝説】“David Roberts / All Dressed Up” TOTO好きのAORフリーク必携。再び幻にしてはいけない名盤。
MASTER PIECE TOTO / AIRPLAY系AORの代表作デヴィッド・ロバーツのアルバム『オール・ドレスト・アップ』(1982)です。
ロバーツは1958年ボストン生まれのカナダ人。アートスクール時代からロック好きでエルトン・ジョンからピンク・フロイドまで、お気に入りのミュージシャンは多岐にわたっていたようです。コンテスト入賞をきっかけにメジャー契約にこぎつけ、デビューアルバムの制作が始まります。
当初は同じカナダ系のデヴィッド・フォスターに制作を依頼するも、当時売れっ子ナンバー1ということでスケジュール的に断念。フォスターがこれまた売れっ子のジェイ・グレイドンを紹介したものの、ジェイもスケジュールの都合で一向に作業が進まず、ジェイの紹介でKeyのグレッグ・マティソンが引き継いで、ようやく制作が始まったのだと言います。次々と大物の名前が上がるのも、メジャー(ワーナー)との契約があってこそ。新人としては恵まれていましたね。
そんなグレッグはLAミュージシャンの中でも屈指の存在として人気でした。そんな彼の人気セッション”グレッグ・マティソン・プロジェクト”は、TOTOフリーク絶賛のアルバム『The Baked Potato Super Live !』(1982)でもお馴染みです。
グレッグがLAの人気ライブハウスのベイクド・ポテトで繰り広げていたセッションには、スティーヴ・ルカサー(G)とジェフ・ポーカロ(Drs)など、既にブレイクしていたTOTOのメンバーを呼び寄せることのできる人物。そんなグレッグの下で制作されたアルバムは、まさにTOTOサウンド炸裂のアルバムに仕上がりました。
Produced by Greg Mathieson
Arranged by Greg Mathieson, David Roberts and Terry McKeown
Executive Producer: Jay Graydon
All songs written and sung by David Roberts
参加ミュージシャン
Guitars: Steve Lukather, except * Jay Graydon guitar overdubs
Drums: Jeff Porcaro
Bass: Mike Porcaro
Keyboards: Greg Mathieson, David Roberts
Synthesizers: Michael Boddicker, Greg Mathieson
except †David Foster synthesizer overdub
Saxaphone: Gary Herbig
Percussion: Paulinho Da Costa, Jeff Porcaro
Linn Machine: David Leonard
Background Vocals: David Roberts, Bill Champlin, Tom Kelly, John Joyce, Joe Chemay, Jim Haas
先ずはなんといってもオープニングのM1。ルークの唸るギターにポーカロ乗り全開のアス・キックなリズム、まさにTOTOです。この1曲だけでアルバムのテイストが分かります。
TOTOといえばルークのギターやペイチの音楽センスと共に、ジェフの独特なノリのドラミングにあるのは周知の通りですが、そんなジェフのブレイが堪能できるのがM3です。このテンポでここまで炸裂するフレーズを楽しめるセッションは数えるほどしかありません。このアルバムをTOTO / AIRPLAY系とする理由がこの曲に詰まっています。
ハードな曲ばかりでなく、M7のようなバラードも素敵です。ロバーツのソングライティングの能力の高さを感じさせます。
そしてM9はミディアムテンポながら、グイグイするリズムが魅力。グレッグのシンセとルークのソロが格好良いです。
ここまでTOTOっぽいのなら、TOTOで良いじゃんと言わないでくださいね。TOTOにはペイチのセンスが不可欠な要素です。ここではペイチではなく、ロバーツのセンスが楽しめるのですから。
このアルバムは91年に一度国内盤としてCD化されたものの、在庫限りでフリーズされていました。いくら版元のワーナーにオファーしても、その後の再発の許可がおりません。リリース当初に盤を買いそびれた人は後の祭り。その内容の良さから法外な値段で取引されていました。まさに幻のCD盤になったのです。
しかし熱心なファンがいるものです。再発に向けて、様々なルートから何故その権利が降りないのかとその理由を探り出したのです。そして何とそもそもワーナーの海外の販売権利が消滅していたことが判明。その後ロバーツ本人とも直接コンタクトが取れて、本人の働きかけもあって、見事サードパーティからの権利を獲得。2006年に見事国内版CDの最初にこぎつけたのだそうです。当時のヴィヴィッドの関係者とその周辺の協力者の方々の努力が実ったのです。ご苦労様でした。ナイスジョブです。
このCDは密林などでもまだ入手可能です。再び幻にしてはいけないTOTO好きなAORフリークには必携の名盤です。
その後ロバーツはヴィヴィッドから2008年にアルバムを2枚リリースします。ナイスなポップ・ロック・アルバム、ご興味のある方は是非お求めください^^;;。
AOR系の記事をこちらでまとめていますので、どうぞご覧ください。