【小笠原諸島】オカヤドカリと私の婚活
私が婚活を必死になってはじめたきっかけは、
実を言うと、小笠原諸島の父島で見た一匹のオカヤドカリだ。
〈女子ひとり旅〉
6月に1人で小笠原諸島の父島に訪れたのだが、
女子ひとり旅でも楽しいし、彼氏いなくても十分だと思った。
父島でのツアーは1人でも気軽に参加できるし、
1人で来ている若い人は私だけでなくて何人かいたので、1人でいることが全然、気にならなかった。
〈夜の砂浜 〉
ツアーに参加したときに、ツアーの人が「夜になるとビーチにウミガメが上陸して卵を産卵します。運が良ければウミガメに出会えます※」と、言っていたので、私は夜に砂浜を歩くことにした。
※海にはライトを当てない。枝がぶっ刺してある場所は踏まない。ウミガメには近づかすぎない。
〈1日目の夜〉
ウミガメ探しに夕暮れに砂浜に出かけると、「キュッキュッキュッキュッキュッ」、「キュッキュッキュッキュッキュッ」と何かが鳴いていた。
鳥なのか虫なのか、今までの人生で聞いたことのない鳴き声が草むらから聞こえた。
なんだろうと思って探してみると、
それは巨大な「オカヤドカリ」だった。
よく観察してみると、オカヤドカリが、別のオカヤドカリを必死に追いかけ回していたのだ。
しばらくして少し暗くなってくると、あちこちでオカヤドカリの追いかけっこが始まった。
賑やかだなと思いつつ、見飽きたので一旦砂浜を離れて防波堤の近くで魚を眺めた。
日が完全に落ちて空が真っ暗になったので、
再び砂浜に戻ることにした。
私が砂浜に戻ると今度は、「ギギギギギギギギギギギギ」と変な音があたり一面に鳴り響いていた。
何だと思って、スマホのライトを足元に照らしたらら、2匹のオカヤドカリが足と足を絡めて交尾をしていたのだった。
なるほど、夕暮れ時に見た追いかけっこは、オスがメスを追いかけていたのだ。
スマホのライトを少し遠くに向けると、砂浜のあたり一面が足を絡め合うオカヤドカリのペアで埋まっていた。
数百匹のオカヤドカリのペアが、同時に交尾していたのだった。
ゾットするほどであった。
ウミガメのことなんて忘れて宿に戻った。
〈2日目の夜〉
ウミガメが見たいので2日目の夜も、私は砂浜を歩いた。昨日とは打って変わって砂浜は静まり返っていた。
しばらく、砂浜を散策していると、あの鳴き声が聞こえてきた。
「キュッキュッキュッキュッキュッ」「キュッキュッキュッキュッキュッ」と。
鳴き声がしたので光を当ててみると、
それは一匹のオカヤドカリだった。
オスのオカヤドカリが一匹、
必死になって求愛行動をしていたのであった。
残念ながら鳴いているオカヤドカリの周りには、他のオカヤドカリなんていない。
それでもオカヤドカリは必死に鳴き続けていたのだ。
「キュッキュッキュッキュッキュッ」「キュッキュッキュッキュッキュッ」とエンドレスで。
「キュッキュッキュッキュッキュッ」「キュッキュッキュッキュッキュッ」
この音は私の恋愛観が変わるほどの衝撃を与えた。
たった1日、出遅れただけで、オカヤドカリはこんな運命になるなんて、、、
恋愛は遊びなんじゃなくて、
人生において命がけでやるもんなんだ、、、
食事を得るための活動(仕事)なんて、
恋の季節がきたらどうでも良い、、、
恋の季節が来たら、必死になって結婚相手を探さなきゃいけないんだ、、、
と、あれこれ考えた。
ウミガメはどうでもよくなって宿に戻った。
〈3日目の夜〉
ウミガメがやっぱり見たいので夜の砂浜に行った。夜の砂浜に行くと、今度は「ササササササササササササ」と音が聞こえた。
何だと思ってスマホのライトを砂浜に照らしたら、
たくさんのカニが砂浜を走りまわっていた。
昨日と一昨日にはカニなんていなかったのに、
砂浜の穴から出てきたカニによって、砂浜が占領されていた。
今日はカニの交尾の日か、、、
父島すごいな、、、
ウミガメのことはどうでもよくなって宿に戻った。
〈帰りの船で〉
24時間かけて船で東京湾に帰るのだが、
電波も届かないのですることが無い。
立つと酔うのでひたすら横になって目を閉じていたのだが、目を閉じるとあの声が聞こえてくる。
「キュッキュッキュッキュッキュッ」「キュッキュッキュッキュッキュッ」と。
目を閉じていて、なんだか涙が出てきた。
今までは恋愛が勉強や仕事の邪魔になると思っていて、恋愛は低俗なものみたいなものという考えが強かったのだが、
一匹のオカヤドカリを見て、パートナー探しは人生の中でも必死になってやるもんであって、最優先なんだと考えがひっくり返った。
恋をお遊びじゃん笑とバカにしていた自分が申し訳なく感じた。
東京に戻ったら、恋の季節(結婚適齢期27歳)が過ぎる前に、必ずパートナーを見つけると心に誓ったのだった。
楽しさと悲しさか混ざった旅だった。
結局ウミガメとは会えなかった。
※ウミガメを見るなら慶良間諸島に行こう。いっぱい見られるよ。