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ずっとツンとしててよね

中学3年の時、クラスにすっごい美人がいた。目鼻立ちが完璧、左右対称で鼻筋もスッと細い。
男子にはもちろん人気。同じ班になりたいのが丸わかりだし、なれなくても休み時間にはすぐ集まってくる。
でも、というか、だからか、女子には嫌われていた。
私も同じ班になったことがあるが、男子は彼女と話すばかりで私とはほとんど会話をしない。今ならみんなをマナー違反だと叱りたいくらいだ。笑

ある日、別の班とも一緒に行動を取ることがあった。
向こうの班の女子2人はいつも2人でいる仲良し2人組だった。
相変わらず彼女と男子は喋ってはしゃいでいた。
仲良し2人組は不機嫌そうだった。
さてその作業が終わるとグループ解散で自分たちの席へ戻る。
男子も残念そうに戻っていく。
すると仲良し2人組がちらっと私の横を見ながらヒソヒソと言って戻って行った。
すると私の横にいた美人が、
「ほら、また私のこと言ってる。」
彼女の発言は私にしかわからなかっただろう。いつもの口角あげた美しい微笑みで言うんだもん。
でもあの大きな目は伏せ目だった。
私は何も言わなかった。
そうやったんや…と少し思った。
だからと言ってそれから私と彼女が仲良くなるというわけでもなかった。

中学を卒業し、その春休みに私は母を亡くした。
彼女もお葬式に来てくれていた。
そして高校生になって初めての夏休み、ハガキが届いた。彼女からだった。
元気にしてますか、と、彼女の女子校の話が少し。普通のハガキだ。
とても嬉しかった。母を亡くした私を気にかけてくれているのがわかったからだ。
私はラッキーかもしれないと思った。みんなが知らない面を知ってる。

その後、大学生になって寒い夜遅くのバスでバッタリ出会った。
後ろの席で手を温めながら紙カップのコーヒーを飲んでいた。
向こうも気づいて私たちは並んで座った。
「なんかおしゃれやん。」
とニヤニヤして言うと、
「え、何が?」
と相変わらず、ツンとした感じで聞いてきた。
「ぜんぶ。コーヒーの持ち方も。」
「何それ。服は〇〇が気に入ってるねん。大学どう?」
と、私の知らないブランド名を言ってきた。そこはスルーして、近況をお互い話して、じゃあねと、私が1つ前のバス停で降りた。
手を振ろうかとチラッとバスを見ると、カップを持ったままもうまっすぐ前を向いてツンとしていた。

ニヤリと笑ってしまった。
ずっとそのままツンとしていてね。

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