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あの時 言葉の壁はなかった
小学校1年生の時、祖父母の家で遠い親戚の女の子と遊んだ。
母のいとこの子どもだ。
アメリカで生活をしているのでその子は日本語がほとんど話せなかった。
少しはわかるようだったが話すことは難しいようだった。
私たちは最初は緊張してうまくにっこりすることもできずにうつむいて照れていた。
それでも子どもたちだけで2階へ上がってお絵描きをしたり、私の夏休みの宿題を見せたりして少しずつ微笑むことができるようになった。
いったいどうやってコミュニケーションをとっていたのか思い出せない。
座っているだけではつまらなくなり、そのうちビーチボールで遊び出した。
ついたりうけたりして下に落とさないようにというルールで遊んだ。
とにかく楽しくてキャーキャーいいながらボールをうけにいっていた。たくさん笑った。
一緒に笑った。
何がおかしかったんだろう。
はねると一緒にゆれる彼女のポニーテールのことだろうか、それとも私のころげかたか。
とにかく笑った。
あの時は英語も全く知らなかったけれど、きっと、「ウプス」とか、「オー」なーんて彼女は言ってたんだと思う。絶対だ。
私は「おっと〜」とか、「ひゃー」とかって。
すごく楽しくて帰ってしまう時は本当に寂しかった。
「バイバイ」こそ英語なのに声も出ず手を振るだけだった。
あの時間、言葉の壁はなかったと思う。