Windowsからの乗り換え先になるか? Linux MintとChrome OS Flex
以前、Windows11が、情報セキュリティの強化のために大きく仕様変更をしたというお話をしました。
YouTubeにPCのことを語っているチャンネルというのはたくさんありますが、Windows11があまりに使い勝手が悪くなってしまっているということは、多かれ少なかれ皆様仰っているようです。
以前お話ししたときに、BitLockerで暗号化されているデバイスの暗号化キーというものを紙に書いて保存しておいた方がいいのでは? 的なことは申し上げたと思います。私が暗に言いたかったことをご理解いただけていれば幸いなのですが、要はそれじゃセキュリティの向上にはならないんではないかということです。
というわけで、PC系YouTuberの皆様の間でWindowsからの乗り換え先として名前が挙がっているLinux MintとChrome OS Flexについて、軽く試してみましたのでその結果をお伝え致します。
Linux Mintの場合
Windowsからの乗り換え先として人気が高いのがLinux Mintです。実はこのOSは、世界で一番利用されているLinuxと言われているUbuntu Linuxの見かけを変えただけです。その他に、若干Guiで操作できる範囲が広がったかなという感じはします。コマンドを叩くという作業が少し減ったということです。すみません、ちゃんと比較してはいませんが。
ただ言えるのは、Ubuntuはタスクバーが画面上にあります。Mintはタスクバーが下にあるんですね。たったこれだけのことで、Windowsユーザーにとってはだいぶ使い勝手がよくなるんですね。と言うことはMacユーザーにはUbuntuの方がいいんでしょうか。
Linux Mintの最新バージョンは22なので、今回改めてダウンロードしてみました。実は弊社ではMintを実用しています。バックアップ業務ではなくデータ復旧業務で使うツールにはLinux上で動くものもありますので。
何はともあれ、ダウンロードです。Linuxを利用しようと思ったら、多くの場合ISOイメージファイルというのをダウンロードする必要があります。ISOイメージファイルというのは、光ディスクをそっくりそのままファイル化したようなものだと思って下さい。Windowsでは、ISOイメージファイル(拡張子が.isoのファイル)をダブルクリックすると実在しない光ディスクドライブがひとつ構築され、そこに入っているディスクを閲覧するという体でISOファイルを利用することができるというのが原則です。
Windows上から見ないとわからないということは、逆に言うとPCへのクリーンインストールには直接ISOファイルは使えないということになります。というわけで、これらをインストールメディアにする必要性があるわけですが、光ディスクにライティングするか、USBメモリに起動メディアとして書き込むかという話になります。
そして今回最新版をインストールしてみてわかったことなんですが、まずMintにはバックアップツールができました。コマンドを叩かなくても、おそらくこのツールを使ってバックアップを行うことができると思います。
そしてVirtual Boxという仮想マシン構築ソフトもあるようです。仮想マシンというのはあるOS上で動くソフトウェアで、1台のPCという体で動作するものです。今回テストは時間がなくてできなかったのですが、この仮想マシン上にWindows11を用意したらどうなるのかなあということはちょっと気になります。
今回ちょっと面倒くささを感じたのは、表示は日本語でされるんですが、日本語を入力するためには日本語入力ソフトをあとからインストールする必要性があるということです。そしてそのためにはコマンドを叩く必要があります。
とりあえずMintの実験は今回につきましてはこれで終わりにしました。
Chrome OS Flexの場合
結論から申し上げますと、インストールできませんでした。
実はこのFlexも、Linux系のOSです。前項でLinux系で一番利用されているのはUbuntuだと述べましたが、隠れ1位があります。それがAndroidです。正確に言えば、Androidは中核にLinuxを据えて、特定のハードウェア向けに、OSとして仕上げ、いくらかのアプリケーションをパッケージにしたものということになりますね。というわけで、GoogleはLinuxを扱うノウハウは持っているはずなんです。
それでPC向けとしてもOSを開発してそれがChrome OSというわけで、当然の話ですがやはりLinuxを中心に据えたOSです。昔はこれをプリインストールしたPCを売り出したりもしていましたが、ことごとくWindowsに敗北してきたと言っていいと思います。今回、Windows11が(今のところ)不評なことにチャンスを見出して攻勢に出たのかなあという気もします。
そして、公式サイトの説明どおりにダウンロードしてみたんですが、起動メディアとしてUSBメモリに書き込む手順がMintとは違うんですね。試してみたんですが書き込みが始まらないんです。環境を変えて試してみたりもしたんですが、やっぱりダメでした。
やってみて思ったんですが、これってChrome OSをプリインストールしたPCがトラブルに陥ったときにリカバリをするための手順をそのまま流用しているんじゃないかと。まあ、今回は残念ながら限られた時間の中で行った試験ということになりますので、今後もっと時間に余裕があるときに実験が行えたらまたそれはその時に発表したいと思います。
結論
残念ながら、Linux MintもChrome OS Flexも今すぐにWindowsを置き換えるほどの高機能なものではないという結論に至りました。
まず、Windowsがここまで来てしまった以上、置き換えOSとして使ってもらうためにはユーザー名とパスワード、の類い以外は全部マウスで操作できる直感的操作でないとユーザーは逃げてしまうと思います。
私はごく初心者が「OSってインストールできるの!?」と驚きの声を上げた現場に立ち会ったことが何回かあるのですが、OSというのはそのレベルで使いやすくないといけないと思います。
ですからそもそも論で言いますとダウンロードしてインストールメディアを作って…なんていう作業をしなければいけない時点でWindowsのリプレースは無理だろうと思うのです。事業継続計画における目標復旧時間(Recovery time objective =RTO)もその分長くなってしまいます。
また、PC用のLinuxは基本的にリナスさんが作った核心部分に世界中のエンジニアが手を加えてOSに仕立て上げて無償配布しているものがほとんどです。ですので、新しいパーツが出て来たときに必要になるデバイスドライバもそういう人頼みというのが現状です。これから配布が始まればいいですが、古いものをいまだに使っている方なんかには残念なことですが諦めるしかないということにもなりかねないと思いました。
小括
というわけで、今回の実験はちょっと残念な結果に終わってしまったのですが、Linuxの可能性はまだまだ開拓の余地があるとは思います。
Linuxはサイバー攻撃に強く、その分セキュリティ的に安全である、と言われているものでもあります。まあこれはLinuxのシェアが高くなかったことから来る誤解という一面もあるのですが、いわば「すっぴん」の状態ですとWindowsより安全なことは確かです。
GoogleならGoogleが責任を持って現行のWindowsレベルにユーザーフレンドリーなものに仕上げてくれたら、Windowsの置き換えになるかも知れないなとは思います。
事実、ビジネス用ソフトはMicrosoft OfficeからGoogle Workspaceへと置き換わりつつあるわけですし。
もしかしたら、いまは時代の転換期にいるのかも知れません。自体は流動的ではありますが、こういうときに画期的なものが作られるのはよくある話です。
ユーザーが「風を読む」必要はありますが、だからこそ楽しみつつ、食わず嫌いをしないでいろいろなテクノロジに触れてみたいものだと思います。
目次
バックアップの方法 オフライン・オンラインバックアップとは?
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その1
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その2
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その3
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その4
IPAの言うセキュリティ対策の基本を見ていきましょう! その5