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パソコンのデータが飛ぶ5つのケース

今回は、パソコンのデータが飛んだときのリスクについてお届けします。
災害が起きなくても、パソコンのデータというのは飛ぶときには飛びます。そういうときのために(それだけではありませんが)情報セキュリティの強化というものがあり、それによって安全性を高めておかなければいけないわけですが、どんなにセキュリティを向上させても、データが飛ぶことは起こり得ます。
このサイトでは「HDDが飛んだ」というのもディザスタリカバリ(ディズアスター・リカバリー)の1種と考えているということはこれまで何度か述べてきました。なので小さいところから順次見ていくことに致しましょうか。

1・ローカルに保存していたデータが飛んだ

およそ考え得る限りPCに関する最小のディザスタはこれでしょう。一般的にはいったんゴミ箱に入るでしょうから、普通はそこから復旧すれば大丈夫です。
ただ、皆様覚えがおありなのではないでしょうか。必要なファイルをゴミ箱からポイしてしまって、それはやってはいけなかったということであったと気付くという事態は、ゴミ箱の中身を全部削除してしまった直後に起こりがちなんです。なんでなのか理由は私にもわかりませんが…。
そのデータが何のデータなのかにもよりますが、企業などで重要なデータであれば、業務の遅延、最悪の場合その業務を諦めなければいけないことにもなりかねません
こういう軽微な情報事故の場合、市販ソフトで復旧できることもままあります。案外高いものではありますが、業務がひとつなくなるよりはマシでしょう。

2・インストールしてあるソフトウェアを消してしまった

Windows95フィーバーがあったころ、私は某PCソフトサポートセンターに務めておりました。そのころ実際にあった問い合わせです。
「上手く動かないんですが…」
(この訴えを伺って、あの手この手でサポートを続けておりました)
「う~ん、もしかしたらHDDの空き容量が足りない可能性もありますね。とりあえず一時的に捨ててもいいフォルダなどありますか?」
「とりあえず、自分で作った覚えもないし使ったこともないフォルダがあります」
「それは何という名前のフォルダですか?」
"あたっくないん"とか書いてありますね」
「"あたっくないん"ですか。確かにあまり聞かないフォルダですね?それを削除してみましょうか」
「はい、しました」
「いかがでしょう?」
「なんかますます動作が変になったんですけど…」
「"あたっくないん"を削除したらますます動作が変に…"あたっくないん"…え?もしかして『ATOK9』ですか?それは絶対捨ててはいけないフォルダでした。まだゴミ箱にありますか?あったらすぐに復旧して下さい」なんてこともありました。
(注・ATOKというのはジャストシステムが販売している日本語入力ソフトです。ワープロソフトの一太郎を買うと同時についてくるものでもあります。日本語ワープロソフトとしてはMSのWordやGoogleのドキュメントより優れていると私は思います)。
以下省きますが、この手の「プログラムフォルダだけ捨ててしまえばアンインストールしたことになる」という勘違いは当時たくさんありました(Apple社のアレはそうですね)。これも、データ復旧ソフトで何とかなる場合もありますソフトウェアによってはインストールするときにアンインストーラーを同時にインストールし、そのアンインストーラーを使わないときれいにアンインストールできないタイプのソフトウェアも結構あります。そうなってしまったら、コンピュータのそこかしこに残っている断片によって異常動作が引き起こされる可能性もあります。断片は自分で探しながらひとつひとつ消すという面倒な作業を強いられる場合もあります。究極的にはさらの状態に戻すしかありませんね。作業期間の大幅な延長が避けられません。しかし! そういうときのためにバックアップというものはあるのです。ぜひ何か大きな変更を機械に加えるときには事前にバックアップを取ってからということをお考え下さい

3・HDDが飛んだ

さて、誰もが考えたくないであろうHDDはじめとするストレージの障害です。とは言え、HDDの障害は多くの方が1回ぐらいはご経験がおありなのではないでしょうか。
HDDの障害って、予兆になるような動作不良がだいたいあるものなんですけれど、どういう動作不良が起こるのか予測できないんですよね。ですからHDDの経年劣化が原因だと気付くのに時間がかかる場合もあります。また、HDDの異常かと思って交換してみたら違った、なんてこともよくあります。
こういうときのためのバックアップ! です。日頃から定期的にバックアップを取っていますと、被害がゼロとは言いませんが最小に抑えることができるでしょう
ちなみに、デスクトップPCで、ご自身でHDDを交換できるぐらいの技術をお持ちの方で、正常動作するかどうか繰り返し電源のON/OFFを繰り返しているうちに新しいはずのHDDが認識されなくなった経験をお持ちの方、いらしたら諦める前に電源を切り、PCの背後にあるシーソー型のスイッチもオフにして、24時間ぐらいほったらかしてみて下さい。PCの中に静電気がたまるという状態になったとき、パーツが認識されなかったり電源が入らなかったりします。

4・SSDが損傷した

いま、重要なデータを保存するストレージとして、また起動ドライブとして、HDDよりもSSDということが多くなっているように思います。HDDと違って物理的に動くパーツがない分、飛んでしまうという事故も少なくなっています
しかし、物理的に損傷してしまうという可能性がゼロではありません。特にm.2のSSDは基板がむき出しですので、取り付け、取り外しの時に損傷してしまう可能性があります。基盤も薄いですし、私はm.2のSSDを見るたびに「蕎麦板」というお菓子を思い出します。
何度も申し上げるようですが、こうして媒体が損傷したときのためのときのためのバックアップです
結局のところバックアップか、とお考えかも知れませんが、情報事故に備えるにはやっぱりバックアップなんですよね。バックアップの3-2-1ルールという言葉は以前にも出しましたが、オリジナルの他に2つのバックアップを、違う媒体で作っておき、そのうち1つは遠隔地に置いておくというバックアップが有効です。ぜひご検討下さい。

5・クラウドのデータが飛んだ

これも以前にも話題にしましたが、クラウドに保存してあるデータが飛んだら。これは本当に対策のしようがないんです。
データ自体は自分で作ったものであっても、クラウドに保存してあるとそのデータをいわば「占有」しているのはクラウドストレージ提供会社であり、モノとしての記録媒体をどう扱っているかはクラウドストレージ提供会社に任されていると言うしかありません。
なお「占有」というのは民法に出てくる用語なんですが、何をもって「占有」とするかは実はまだ定説がないんです。とりあえずわかっているのは「自己のためにする意思をもって物を所有する」というところまでで、仮にモノが自分の手元になくても占有している状態と判断されることもあります。具体的なモノがあってもそういう状態なのですから、法律で言うところの電磁的記録の占有権なんて、法律がまだまだ実態に追いついていないところだと思います。
ですので、もうこういう表現をするしかないんですが、バックアップの3-2-1ルールを業務の中に取り入れることによって仮に被害が出ても最小でとどまるように普段から準備をしておくことしか、今のところ考えられません。
最近のクラウドストレージ提供会社は「すべてSSDを使っています」と宣伝している会社もありますが、やっぱり情報単位あたりの価格っていまだにHDDの方が安いですよね。
そろそろHDDの時代も終わりじゃないか?と思っても、なんかいま1台で24TBのHDDとかありますね。SSDにはまだまだ届かないところです。結局HDDを使っている業者もまだまだあると思います。
というわけで、クラウドの利用を始める際には、提供業者とユーザーで責任の範囲について明確な契約を交わしておくのが必要不可欠だと思います。

小括

というわけで、今回はデータが飛ぶという惨事をシチュエーション別に5パターン取り上げました。
本当に弊社と致しましては「くれぐれもバックアップをおろそかにしないで下さい」と申し上げるしかありません。なんのためにバックアップを行うかと言えばこのためですからね。コピーやバックアップが容易なのがデジタル情報、デジタル媒体の長所のひとつですから。
なお、弊社では媒体の損傷についてデータ復旧業務も行っております。HDDをはじめとして、SSD・USBメモリ・SDカード・光ディスクなど、すべてとは行かないかも知れませんが某かの情報は取り出せる可能性があります
そういったことがありましたらご相談いただければと思います。
本日はここまでとさせていただきます。
ありがとうございました。

目次

クラウドストレージが持つ特有のリスク

クラウドストレージが持つ特有の脆弱性

クラウドストレージと遠隔地バックアップの相互補完性

クラウドストレージのデータ消失に関する責任の所在

ディザスタリカバリ手順をあらかじめ決めておくべき理由

弊社でお取り扱いしておりますデータ・OSにつきまして

クラウドストレージのメリット・デメリット

Microsoftさん、それはないでしょう

Windowsからの乗り換え先になるか? Linux MintとChrome OS Flex

事業継続計画の立て方 その2

事業継続計画の立て方 その2 の注釈

事業継続計画の立て方 その3

BitLockerをいろいろ使ってみました

事業継続計画の立て方 その4

パソコンのデータが飛んだ際のリスク10選

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