ドラマ『白暮のクロニクル』を見て欲しい

はじめに

 WOWOWドラマ『白暮のクロニクル』を最終回まで視聴した。結論から言うと期待を遥かに上回って面白いドラマだった。地上波のドラマほど気軽に見られる媒体ではないので、WOWOWドラマのファン、キャストやスタッフのファン、原作のファン以外の人が見つける機会は少ないんだろうな、と思うと悔しいのでこのnoteを書く。○○のファンだから、とかじゃなくて単に作品が面白いんだ!!と叫びたい。全部喋りたいので思った事を全部書くから、好きなところだけをかいつまんで読んでほしい。多少中身には触れているけど、ネタバレはないはず。中身に触れている章は冒頭に注意書きがあります。
 
1話がYouTubeで無料公開されています。ぜひ見てね。

あらすじ

 連続殺人鬼を追うミステリー。舞台は、不老不死の人間「オキナガ」と一般人が共存する社会。オキナガである主人公、雪村魁と厚労省のオキナガ対応部署で働く伏木あかりがバディを組んで事件に立ち向かう。
 めちゃくちゃ粗いから、気になる人はこちらをどうぞ。

『白暮のクロニクル』を見たきっかけ~放送前

 まずは自己紹介。私は、このドラマの主演を務めるアイドルグループWEST.の神山智洋さんのファンだ。ファン歴はまだ数年で、今年デビュー10周年を迎えた彼らのファンとしてはまだ浅い方。WEST.のファンになった経緯はややこしいので省くけれど、神山くんのファンになった理由の一つに彼が主演の一人を務めた『宇宙を駆けるよだか』がある。だから、私は彼の主演ドラマをとても楽しみにしていた。3月にWOWOWに加入したのはこのドラマを見るためだ。
 ゆうきまさみ先生による同名の原作漫画は全11巻。ドラマの前に作品を知っておきたくて、とりあえず1~3巻を買った。せっかくなのでドラマ帯のものにした。たった3冊でも唸るほど面白かった。好きなポイントは長くなるので最後の章に書く。1~3巻を紙で買ったので、本屋に行ってすぐに残りの8冊も買い足した。夢中になって読んだ。
 原作を大好きになったからこそ、役者のファンだからこそ実写化が失敗したら怖いなとまで思っていた。杞憂だったよ、というのが次の章。


キャスティングについて

※キャラクタープロフィール程度ですが内容に触れます

・雪村魁(神山くん)

 見た目年齢18歳はさすがに……と思った。神山くんの実年齢は30歳。キラキラ輝くアイドルの神山くんは確かに実年齢よりは若く見えるけど、18歳はさすがに無理があるよ、と思っていた。今も思っている。ただ、18歳に見えないから似合っていないということではなくて、むしろ素晴らしいキャスティングなんじゃないかと思う。ここで10代後半~20代前半の役者さんをキャスティングしなかったスタッフ陣(プロデューサーさん?)に拍手を送りたい。
 雪村魁は見た目は18歳だが、中身は88歳。では、雪村魁は88歳相応の言動をするのか?答えは否。むしろ、大人びた18歳と言った方が印象は近いと思う。この印象は原作漫画、ドラマ両方に通じる。言動は単に経験した年数によってだけでなく、肉体の状態にも影響を受ける、というのが原作の立場なのだと思う。確かに、歳を重ねるにつれてできるようになること、できなくなること、社会からの視線、そういったことが精神の発達に影響しないと考える方が奇妙だ。幼すぎないが若さがある、30歳職業アイドル神山くんはぴったりだと、作品を見て思った。
 怒りを60年煮詰めてきた復讐者の役としても、強い目力を持つ神山くんはうってつけだったのではないかなと思う。アクションシーンも映えるし。これはファンの欲目かな?欲目ついでにもう一つ褒めておくと、ダンスが得意だから身体制御が上手なのか、ときどき「漫画のコマをそのまま抜いてきたのか?」と思うくらい雪村魁の佇まいをしていることがあった。YouTubeに無料公開されている1話でも見られるのでぜひ見て欲しい。
 神山くんがグループの相対的には小柄だけど絶対評価だと小柄でないあたりもどうするのか気になったけど、周りのキャストさんとの体格のバランスも良い感じだった。

・伏木あかり(松井愛莉さん)

 あかり役がこの方だと知ったときに、ドラマは成功するんじゃないかな、と思った。そのくらい写真があかりだった。ドラマを見ていてもずっとあかりだった。感謝してもし切れない。元気いっぱいだけどちゃんと大人なところとか、真っ直ぐ前のめりなところとか、すごくあかりらしかった。魁と並んだ時に、二人で「魁とあかり」という印象になっていて、作品を原作にぐっと寄せてくれたように感じた。

・久保園さん(光石研さん)

 見た目めっちゃ久保園さん。原作より可愛らしい印象。ドラマとして分かりやすいように、お茶目さを強調したのかしらと勝手に思っている。真面目そうなのになんだか柔らかいが久保園さんらしい。1話で説明が足りていないところがらしさを強調していて好き。11話の久保園さんも大好きなんだけど、ここはネタバレになるからまたいずれ。

・唐沢(高橋努さん)

 前半は原作にも増して嫌な奴だった。怖いし酷いし乱暴なので、魁に酷いことをする度にテレビの前で怒っていた。作品をピリッと沈めてくれる存在だったと思う。魁と並ぶくらいの視線の鋭さがあった。唐沢は嫌な奴だけど、唐沢が出てくるシーンは好きだった。

・羊殺し

 一番気になっていたキャスティングだった。めっちゃ良いじゃん!と思ってます!


ドラマ化というものに対する感想

※あんまり具体的な話はしないけど、内容に触れるよ
 原作の、世界観の作り込みが大好き。不老不死の人間に対して「パンデミック源になりやすい」→厚労省が管理したがっている、というような、派手な設定じゃないけどオキナガがいたら確かにそんな世界だったろうと思わせる緻密な設定に感動した。作中世界は私達が生きているこの日本社会とそうかけ離れていない世界だから、偏見や差別といった問題が現実と同じような質感で描かれている。ファンタジーだけど、私達が暮らすこの社会の話なんです。18歳の身体のまま70年生きたら、18歳でも88歳でもない言動になるんだろうなってところとか、登場人物の一人一人が生きている感じがする。
 ドラマでもこのリアリティが大切にされているように感じた。偏見、差別のようなテーマは、ドラマ版になってより明示的に描かれていたように思う(自分のペースでじっくり読める漫画より、映像作品の方がはっきり説明する傾向にあるのかなと思っています)。
 神山くんが白髪を地毛にこだわった、と話していたけれど、これもよかったと思う。見た目18歳中身88歳の吸血鬼探偵って設定だけ見るとイロモノすぎる、というかキャラクターありきの作品みたいに見える。けれど、この作品の魅力は個性的なキャラクターよりもストーリー展開そのものにあると思うから、キャラを立たせることよりも世界に馴染ませることが優先されていて嬉しかった。

 コミックスは11巻。ドラマは30分×12本。全部を映像化するにはちょっとドラマの尺が短いんじゃないかと思っていたし、実際いろいろ削っていたところはあったけれど、大筋がぶれていなかったことが嬉しい。願わくばスピンオフとして飛ばしたエピソードが映像化されますように。映画化してくれてもいいよ。
 展開を切り詰める代わりに、映像表現ならではの迫力が足されていたように思う。アクションシーンとか。だから、中身が減っていても物語が薄くなったようには感じなかった。実写化ってみんなこうあって欲しいよ。原作のファンで実写化嫌だな~と思っている人がいるなら、原作が軽んじられたり損なわれたりはしていないよ、と自信を持って伝えたい。


終わりに

 本当はドラマの内容について1話ずつ書いていくつもりだったけど、時間がかかるのでそれは小出しにすることにします。原作もドラマもどっちも最高だよ。好きな方から見て、好きになったらもう一方も見て欲しい。ドラマには描かれていない原作のエピソードがあるし、原作についての1つの解釈がドラマだからドラマをみて気付くこともあると思う。WOWOWにわざわざ加入するのって面倒くさいよね。でも音楽ライブとかスポーツの試合とかミュージカルとか、WOWOWならではのコンテンツが他にもたくさんあるから一ヶ月だけでも入会してみてほしい。そしてドラマ『白暮のクロニクル』を見て欲しい。ドラマ『白暮のクロニクル』を見て欲しい。1話はこちら

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