お母さんへ

お母さん、毎日ありがとう。
最近、お母さんが毎日やっていた料理、掃除、洗濯は私がやっています。お父さんは仕事で疲れてるから、やらなくてもまあ許してあげようと思ってます。たまに本当にイラっとするけどね。
お母さんはずっとこんなに大変なことをやってくれてたんだね。お母さんがいなくなって初めて気づきました。
お母さんがガンになったって聞いたとき、少し恥ずかしいけど、私は涙が止まりませんでした。もう治らない、あと1年しか一緒にいられないと聞いて、すごく悲しかった。
でも、お母さんは1年どころか、4年も頑張ったんだよね。正直、信じられないよ。このままガンになんて負けないんだ。ガンなんて本当は嘘だったんだって思ってました。
私がガンの話を聞いたのは4年生。私は初めて学級委員に立候補したんだよ。お母さんは知らなかっただろうけど、なんか、お母さんがいなくなるから私がしっかりしなきゃ!って思い始めたんだ。
勉強も頑張ったんだよね。100点のテストを見せたらお母さんが喜んでくれるかなって思って。実際喜んでくれたしね。それが嬉しくて勉強を続けてたら、中学校の最初テストではベスト10に入るくらい頭が良くなってた!
その時お母さんはこう言ったんだよ。
「あんたはすごいね。お母さんの娘じゃないみたい。これで安心して天国に行けるわ。」って。
覚えてる?お母さんの娘だよ。がんばり屋のお母さんの娘だからこんなにがんばれてるんだよ。
私はこの頃からお母さんを安心させようとひそかにがんばってたんだ。心配かけたらお母さんのガンが悪くなるような気がしたし。
学級委員も続けて、勉強も部活も家事も頑張った。部活では1年席の中で1人だけコンクールのメンバーに選ばれたし。けっこうすごかったと自分でも思うよ。
面談で「しっかりしてますね。」って先生に言われたのに、お母さんは「家では好き勝手してますよ。」って言ってたのも覚えてるよ!私、家でもちゃんとしてるつもりだったよ!まあでも、確かにお母さんに甘えてたんだなって今は思うよ。お母さんってやっぱりすごいね。
でもお母さんは少しずつ具合が悪くなって、病院に行く回数が増えるようになったよね。私は留守番で、お母さんとお父さんだけで病院に行ってた。本当は私もついていきたかったけど、我慢した。
私に何か嬉しいことがあっても、お母さんの体調の方が心配で言えないこともたくさんあった。お祭りも友達と行く気分になれなかったときもあった。
お母さんがどんどん痩せていって、家でも寝ていることが増えて、私はそう思うたびに神様にお祈りしたんだ。「お母さんを助けてください。私は何でもします。何でも我慢しますから。」って。
でも、私は中2になってて、お母さんがもう長くないことも知ってた。お母さんがどんなに強がっても、私はお母さんの娘だから気づいてたよ。大人になったってことだね。つらかったのに無理させてごめんね。
お母さんが天国でも安心できるように、今も勉強も部活も頑張ってるよ。この前は、学年3位までいったよ!吹奏楽も県大会で金賞取ったよ!上には行けなかったけどね…
でも、お母さんがいなくなった頃と比べると、いろいろ前向きにできるようになってきた。あの頃はひどかったからね…
あー、ちょっと思い出してきちゃった。お母さんがいなくなって1年の節目だから、お母さんに手紙を書こうと思って、初めての手紙だし、なるべく明るくいいことだけを報告して、お母さんを安心させたいと思ってたけど、やっぱりダメだ。
こうやって手紙にするとさ、思い出しちゃうよ。寂しい。悲しい。お母さんと一緒にいたい。私いっぱい頑張った。
授業参観も体育祭も音楽祭もコンクールも全部、お母さんに見てもらいたかった。
お母さんに褒められたかった。怒られたかった。ケンカしたかった。お話したかった。旅行もゲームもお手伝いも、何でもやりたかった。
具合が良くならなくても一緒にいたかったよ。
お母さんと最後に話したことがなんだったかもう忘れちゃったよ。
何で神様はお母さんをつれていっちゃったの?お母さんが何か悪いことしたの?私が悪い子だったの?なんで?なんで?いやだいやだいやだ。お母さんと一緒にいたい。
頑張るのつかれたよ。お母さんがいたから頑張ってたよ。お母さん掃除やってよ。ご飯作ってよ。
お母さんと一緒にいたいよ。
でもね、わかってるんだよ。こんな弱音は1年前に吐ききったからね。どんなに言ってもお母さんはいないんだよ。お父さんを困らせるだけなんだよ。
それでこの後私は落ち込むんだ。お母さん心配してるかな。お父さんごめんね。私は弱いなって。
でもさ、今日だけ許してね。今日だけだよ。毎年1日だけ自分を許すことにしたの。
お母さんへの気持ちは私の力になってきたから。
思い出したら明日からまたがんばれるから。

だから弱音はおしまい!
私、強くなったよ!前に進めるようになったよ!(涙は出てるけどねw)
将来はお母さんみたいになるんだ。
強くて(強がりで)
家事を何でもこなして(手を抜きながら)
自分がつらくても人を思いやれる
そんな人になるよ。
勉強も部活も頑張るよ!
もうすぐ最後のコンクールだからね!部長だからね!
コンクール終わったら受験だよ!
お母さんの行ってた高校か、もっといい高校に入るよ!
お父さんのことも任せてね。
相変わらずご飯食べ終わるのは遅いし、家事はやらないけど、たまにご飯作ってくれるようになったの!
だから大丈夫だよ。
普段はこんなに言葉にできないからちょっとスッキリした。
お母さんの声は聞こえないけど、お母さんはきっと優しくうなずきながら黙って最後まで聞いてくれてるんだよね。
わかるよ。お母さんの娘だからね。
だから寂しいけど、また来年ね。
終わらせないとずっと書いちゃいそうだから。書き終わったら泣くのやめるから。
来年は高校生になって、彼氏の紹介でもしようかな。
またね、お母さん。私はなんとかやっていけてるよ。なんて言ったらこの気持ちが伝わるか、どれだけ言ったら気持ちが晴れるかわからないけど、何回でも言うよ!
お母さん、私これからもがんばるよ!
お母さん、これからもずっと見守っててね。
お母さん、ゆっくり休んでそっちで待っててね。
お母さん、大好きだよ。

お母さんのことが大好きな中3の娘より

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