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心のストーブ

週末、とても嬉しいことがあった。
自分の人生を変える、出会いの多い旅ができた。

富山から安曇野にかけて用事があったので(その話はまたゆっくりと)
2泊3日のうちの2日目の夜、奥飛騨に泊まることにした。
というのも、Google MAP様で道を追っていた時に何だか惹かれたお店があった。それが「食堂カフェ よつば」さんだ。

調べてみると、ナチュラルワインとか日本酒とか発酵とか好きなワードに溢れている。
これは行った方がいいな、という直感を信じて、絶対お酒飲んじゃうな〜と思ったので徒歩10分くらいの宿を予約することにした。
Instagramもフォローしてワクワクしていたら、オーナーさんからDMをいただいて、あれよあれよとパンを持って行くことになった。

普段は初対面の人に会うというだけで肩に力が入るし、ましてや素振りパンを持って行くなんて。絶対緊張するじゃんというシチュエーション。
でもその日は全くもって違った。驚くほどに緊張のきの字もない。
今思えば、DMでオーナーがそういう空気を作ってくれていたのだと思う。
(ネットを超えても伝わる真心と愛、たまらん、たまらん。)

夜の奥飛騨温泉街のぼんやりとした灯りも、モダンな建物の醸す良い雰囲気も、少し積もった雪で冷たく抜ける空気も、何故だか初めての感じがしなくて宿から店までの道中でさえも背中を押してくれているようだった。

店について確信した、うわ〜、絶対良い店だ。
ドアの取手一つ、掴んだ時に温かみを感じるし
店の中のインテリアも壁のアートも、全部がドストライクだった。
その空間にいるだけで暖かくてチャージされる感覚は、あのマウンテンライフ以来である。
言葉は「こんばんわ〜!」と発しているのに、心の中は「ただいま〜!」みたいな感じだった。

お酒とお料理は出てくる全てのものが美味しい。料理が好きな人の味がした。本当に、何を食べても美味しいの。(優しい味わいがたまらん、たまらん)
というか、初めて会った私に合わせて判断してくれていたのだろう。
野球で言えばここ取りやすいでしょ?ってところに、優しいボールを投げてくれるような、そんな感覚だった。
持って行った私のパンも焼いてくれて、食卓に並べてくれた。
フッカフカのモチモチになったそのパンは、本当に私が作ったのか?と思うほど美味しくなっていて驚いた。
何より、誰かとこうして自分のパンを分け合うことがこんなにも尊いのかと実感した。

もちろん、会話もそんな感覚。
私がどんな大外しのボールを投げてもちゃんと拾ってくれて、取りやすいところに返ってくる。
そこには何のプライドも着飾りも必要がなくて、ただただありのままの自分でいられたことが自分とってかなり驚きだった。おかしい、今日、初対面なのだ。
そんな心地いい時間はあっという間に過ぎて気がついたら日を跨いでいて。
学生時代みたいだな、って笑い合うその時間もかなり尊いものだった。
私はきっと一生この日を忘れないし、この空気感がいいと思える感覚を大事にしようと思った。

着飾りが必要のない存在と共にする時間がこんなにもいいものなのか。
そう心がかみしめたのは安曇野に向かう車の中だった。
オーナーの淹れた温かいコーヒーを口にしながら、自分の心にクッションがあることを自覚した。
ありのままを受け入れてくれる人がいるという心のクッションは、日常に戻っていく自分への最大のプレゼントだ。

また一人、大切な人が増えた。
パンをやらなければ出会うことのなかった人。
何かを成し遂げようとすると、段々と大切な人が増えていく。
それは嬉しいことでもあり、切ないことでもあり。

大雪の降る奥飛騨から安曇野の車内で、不思議とずぅっと暖かかった。

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