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【福祉note】『たかさんと私』#40 それを「トーマス」と名付けた日のこと

たかさんの退院の日が決まりました。正確には、「このまま状況が悪くならなければ、退院できる日」というものです。
そのころ病室では、補装具のつけ外しやリハビリについてなど、退院を見据えた連絡のやり取りが頻繁に行われるようになりました。

たかさん自身も、リハビリを兼ねた病棟内の散歩が日課になっていました。
「たかさん、歩きましょう。」
と声をかけると、「くるまいす」と返してくれます。

…え? 歩くのに車椅子?

ちなみに、たかさんは歩行器も車椅子も両方「くるまいす」と表現します。歩行器で歩くので、「くるまいす」と返すのは正解なんですが…ちょっとややこしいです。

何度か、「ほこうき」と伝えてみましたがうまくいきません。そこで私は、何を思ったか歩行器を指差し「トーマス」と伝えてみました。

するとたかさん、「トーマス」をバッチリインプット!
それ以来、「たかさん、歩きましょう。」
と声をかけると、「トーマス」と返してくれるようになりました。

私とたかさんにしか伝わらない事で、支援上それが正しかったのかわかりませんが、少し距離が縮まった気がして温かい気持ちになりました。

この物語も、いよいよ最終章が近づいてきました。
たかさんと私が奏でる【福祉の音】はまだまだ続きます。

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けん
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