撓やかな世界
黄金色の稲穂が頭を垂れている。
辺りには斑に抉れた跡もある。
風に容赦なく圧し潰された跡が。
その稲穂はどれだけ倒れようとも折れることはなかった。
たとえ大きく風に吹かれても。
倒れても。起き上がれなくても。
収穫を迎えられることに変わりない。
今年も厳しい季節を耐えてここまで来た。
苛烈な夏は乗り越えた。
世界の色彩は優しく。
輪郭はあまりに柔か。
体温と同じ風の心地。
不恰好な夕陽に照らされるその姿は悠々と誇らしい。
陽は落ちる。そしてまた昇る。
待ち侘びた同じ夜明けは黄金色。