モンゴルとゴビ砂漠④ ゲル宿泊編
ゲル集落に到着した我々モンゴリアンデスワーム調査隊は、カルガモ親子のようにガイドのOさんに着いて行き1つのゲルの中へ入った。
「サインバイノー!(こんにちは)」
住人らしき人が2人いる。
ゲル内は生活感ある調度品がきれいに置かれていて広々としている。テレビまである。
Oさんはモンゴル語で2人に話しを始めた。
Oさんの話が一通り終わると2人は出て行ってしまった。
要約するとOさんはゲルの宿泊交渉をして、我々はこの晩ここに泊めてもらうこととなった。元々いた2人は隣の親族のゲルに一晩移動してもらったのだ。しかもここはゲストハウスでもないし事前アポなどは取っていない様子だった。
もちろん宿泊費は支払われるが、こんなあっさり突撃訪問で泊めてもらえるとは遊牧民の懐の深さに恐れ入る。
遊牧民は環境の特殊性から助け合い精神が強いらしい。遠方から遊牧してきた人が他人のゲルに勝手に入って、誰もいなくても勝手に茶を飲んだり菓子を摘んだりする。移動の民はお互いそれを気にしないことで野垂れ死にを回避してきたのだろう。
我々が部屋でくつろいでいる間、お茶と菓子が供された。
左の鍋に盛られているのが「アーロール」と呼ばれる乾燥チーズで、左の茶碗に入っているものが山羊乳で煮出したお茶だ。
アーロールは山羊のチーズらしく酸味と強烈な臭いが口いっぱい広がる。一方山羊乳茶は穀物入りなのだが山羊の獣臭が香るボヤっとした味だ。
外もやっと日没になると今度は夕飯が出てきた。
こちらはウランバートルで食べたものとは違い、味付けは塩のみのようで、かなりあっさりしている。
こっちの味付けの方が伝統的と思われる。
どうにも物足りないので持参した醤油をかけたら劇的に美味くなった。
腹も満たされ夜も更けると肌寒くなってきた。
寝袋に潜り込んで就寝。
翌朝になるとまた山羊乳茶が出てきた。今度はこれをどうにか美味しく飲めないかと、これまた持参したコンソメと醤油を入れてみた。
すると家系ラーメンのスープのようなコッテリしたコクのある飲み物になった。獣臭が良いアクセントだ。
美味い美味いと言って飲み干すと同時に、伝統を穢しているような罪悪感が込み上げてきた。
この日からいよいよデスワーム調査地へ向かう。