冬のシベリア⑨ ヤクーツク編 魚釣り
冬のサハでは凍った川で釣りができる。日本のワカサギ釣りと要領はほぼ同じだ。
宿のオーナーに釣りがしたい旨を相談したらツアーを予約してくれた。翌日車が迎えに来ると、私の他にイギリス人親子が先に乗っていた。
更に釣りガイドをピックアップし川を目指した。
厳寒の釣り人
冬の川は当然ながら凍っており、雪もそこそこ積もっているので川と陸地の境目がさっぱり判別できない。
フロント部分をガムテープで補強した三菱デリカは大雪原をガンガン進む。毎度日本車は世界の辺境で頼もしく活躍している。
走行中釣りガイドが窓から身を乗り出し始めた。車内に冷気が一気に入り込む。
鋭い眼光を雪原に向けながらドライバーにあっちだ、こっちだと指示を出している。
ガイドは立派な髭を蓄え迷彩ダウンをまとったオーラのある男だ。
360度雪原の景色から彼はどう判断し進行方向を決めているのだろうか。ベテランだけに養われた経験と勘が釣りポイントへ導いているのかも知れない。
しばらくするとドライバーに停車の指示を出した。
景色は依然として変わらない。しかし近くに釣りをしているらしきテントがあり、ガイドはそこへ駆け寄った。少しするとガイドが戻ってきた。
ガイド「この辺釣れるらしいからここにしよう」
結局他の釣り人情報を頼りに釣りポイントを決めてしまった。私の中の惚れ込んだベテラン像は虚しくも崩れ去った。
ポイントを決めてからの作業は手慣れていた。せっせとテントを設置し、ストーブを焚き、氷上に穴を開ける。ベテランオーラが復活してきた。
テント内はストーブを焚いているのでいくらか暖かい。後にこの画像を見た知人から一酸化炭素中毒の危険性ありと指摘された。
小さなリール付きの竿で釣り糸を穴に垂らして魚を待つ。
ワカサギ釣り経験者なら同じものをイメージしてもらって良い。釣れるのもワカサギの様な小魚であった(魚種不明)。
私の釣果はわずが1匹。
イギリス人親子は数匹ずつ釣り、ガイドはうろ覚えだが10匹程度だったか。
魚の画像を撮り忘れてしまったが、釣り上げて放置するとすぐ凍り始める。
冬のシベリアで漁業となると冷凍物にしないで運ぶのはかなり大変だと思われる。
日も暮れて寒さが増した頃、釣りを終えて帰り支度をした。
釣った魚は食べれるのかと淡い期待をしていたが、ガイドが全部持ち帰ってしまった。
満足そうな顔をしたガイドに手を振って別れを告げた。
魚をアテにウォッカでも飲んだのだろうか。