見出し画像

2種の質問間でギャップを生み出す

 「正義の反対は、正義。」

 数多くの著書を手掛けており、現在はベネッセコーポレーションでご勤務されている庄子寛之先生から教えていただいた言葉です。

 教師がAと言う。一方で、保護者の方はBと言う。
 こちらが正しいと思って考えを発信しているのと同じように、相手もまた正しいと思っている。

 私も、日々心に言い聞かせています。
「考動クラスづくり」の理解を得られるように学級通信や懇談会の場で発信をしますが、それを押し付けたり、ましてや賛同してくれない保護者を悪者扱いしたりすることはご法度。
 この言葉は、社会人のあらゆる場面で生きてくる金言だと思います。

 

 今回は、「2種の質問間でギャップを生み出す」というお話です。

 何のギャップかと言うと、「教師の対応の様子」です。

 私は、授業中にされる質問を2種に大別し、その対応の様子を意図的に変えています。

(1)教師が答えるべき質問
  例:「この筆算のやり方が分からないので、教えてもらえますか?」
    「○○っていう言葉の意味を教えてもらえますか?」
    「この学習は、パソコンで調べてもいいですか?」 …。

(2)‟教師に聞く“以外の手段でも答えが見つかる質問
  例:「プリントって裏の問題もやらないとダメですか?」
    「テストが終わったら何をすればいいですか?」
    「授業って何時までですか?」 …。

 (1)は、換言すると教師である以上、教えてあげないと仕事放棄になるような質問です。
 どんなに考動できる児童を育てたくても、大きな困り感をもって質問しに来ているのに、「あなたはどう思う?」「任せるよ!」「自分で考えてみて!」といった鬼対応はさすがにしません。
 
 このような質問が来た時に、「分かる人いる?」と周りの友達に助け舟を求める先生もいますが、個別で聞きに来た場合、私は(2)とのギャップを明確に作りたいので、自分で対応します。そして、これでもか!というくらい丁寧な返答をします。
 
 仮に、児童が「この問題分からないので、教えてもらえますか?」と来たら…
 

「もちろん!先生が行くから、○○さんは教科書の〇ページを開いて机で待っていてね!」
⇒「これはこうで、こうで、こうやるよ!大丈夫そう?よし、頑張ろう!」
⇒「問題解けた??分からないことをちゃんと聞きに来て、えらいぞ!!」

 
といった感じで対応します。
 
 これらの丁寧な対応には、「分からない学習に関しては、何の遠慮もなく聞きに来てOK!」という雰囲気をクラス全体に広める意図もあります。
 
 考動クラスをつくろうとした際、ともすると児童の中には“先生には全く質問できない・してはいけない”と誤解を抱く子もいます。
 ここに誤解が生まれないよう事前に説明はするものの、具体的なシーンを見せて言動が一致していることを体感させたいというわけです。
 
 
(2)は、掲示物や事前指導によってすでに答えの導き方が分かっている質問です。これらの類の質問については、
「任せます!」
「どうだろうねぇ~(笑)」
「1回考えてみて~(笑)」
 といった曖昧な返答を徹底的に行ないます。

 
 児童には、「困ったら、先生に聞けばいい」という思考パターンが染みついています。
 ダメなことだと決めつけられませんが、考動クラスをつくる上で質問の多さは大きな足かせとなってしまいます。
 ですので、(1)は、いつでも何回でもしていいよ!という質問で、(2)は減らしていくべき質問であるということを、教師の対応の様子にギャップを生み出すことで徐々に刷り込んでいきます。
 
 クラスが育ってくると、私の曖昧な返答を聞いた他の児童が、
「○○だよ!」
 と教えてくれるようになります。そんな言葉が表れたら、すかさず、
「お~!自分で考えても分からなかったら、友達の頭を借りるのはGoodだよね!先生いなくても、友達がいれば大丈夫だね~(笑)。」
と横の関係を繋げに行きます。
 
 特に高学年は、横の関係が築かれていないとクラスの自治力を高めることができないからです。また、クラスの自治力がないと、‟正しく“考動することができません。
 
 考動クラスをつくるために、児童の質問によって教師の対応にギャップを生み、横の関係を繋いでいくというお話でした。
 
 本日もお読みいただき、ありがとうございました。次回は、「考動クラスを支える‟考える宿題システム“」というお話をします。

 

いいなと思ったら応援しよう!