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どうする団塊ジュニア世代(その九)<ジオン公国の国家形態とは>


ジオン公国

宇宙世紀0079
宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り地球連邦政府に独立戦争を挑んだ。

『機動戦士ガンダム』
番組冒頭のナレーションから抜粋

宇宙世紀0080
地球連邦政府とジオン共和国の間に終戦協定が結ばれた。

『機動戦士ガンダム』
最終回のナレーションから抜粋

宇宙世紀0079」と「宇宙世紀0080」のナレーション文で相違している部分がありますが、目ざとい貴方は直ぐに分かったはずです。
そう、「ジオン公国」が「ジオン共和国」になっていますね。

『機動戦士ガンダム』がよく分からない団塊ジュニア世代以外の方も、今後の展開に関係してくるので、一応、お付き合い下さい。

ジオン公国は、デギン公王を君主とする「君主制」の国家です。
「君主制」とは1人の支配者が統治する国家形態なので、デギン・ソド・ザビはジオン公国の支配者となります。

ちなみに公国とは公爵が治める小規模な自治国家なので、地球連邦軍と比べて大幅に国力が劣っているジオン軍を表現するには丁度いい呼称です。

一般的に公国の君主は、「公」という君主号なので、本来はデキン公なのですが、公王は宇宙世紀特有の呼び方では?と推察します。

また公爵(公王)は世襲制なので、ザビ家が代々継ぎます。
次の公王は順当に行けばギレンですが、デキンはガルマに継承させたかったかもしれません。

さて、そこら辺を踏まえて冒頭の話題に戻ります。
なぜ「公国」から「共和国」に変化したのでしょうか?

ジオン公国は元々、ジオン・ズム・ダイクン(赤いヤツのパパ)が建国した共和制の国家でした。だからザビ軍では無くジオン軍なのです。

「共和制」とは、国民に主権があり、選挙で選んだ元首が統治する国家形態のことです。

しかし、ジオン・ズム・ダイクンの死後、頭角を現したデギン・ソド・ザビは独裁体制を敷き、自らが公王となり君主制の国家とした上で、地球連邦軍に独立戦争を仕掛けました。

奇襲攻撃を仕掛けた序盤こそは、破竹の勢いでしたが、圧倒的な国力の差(ジム作戦)により次第に劣勢となり、宇宙要塞ア・バオア・クーで壊滅的な打撃を受け戦争継続が困難となります。

*ジム作戦とは?

その間、ザビ家全員が次々と死亡し(実はジオン軍の赤いヤツの仕業)、君主一族がいなくなったことから、ジオン公国は従来の国家形態だった「共和制」に戻し、「ジオン共和国」として終戦協定に臨んだのでした。

ちなみに地球連邦政府は、アメリカ合衆国のように、高度な自主権を持つ多数の国(アメリカの場合は州)によって構成される連合国家であり、国家形態は「共和制」になります。

これらの類似点からも『機動戦士ガンダム』は、つくづく太平洋戦争のオマージュであると推察してしまいます。

それでは戦後日本の国家形態は戦前と比べどのように変化し、どのような特徴があったのでしょうか?

天皇制継続のカラクリ

時は宇宙世紀から1946年へ。(ここからは完全にフィクションであり、実在の人物や団体などとは関係ありません)

『マッカーサー三原則』
 ①天皇制継続
 ②戦争放棄
 ③封建制廃止

新憲法の草案を10日で作成するという無理難題を押し付けられた加藤法制局部長は『マッカーサー三原則』について考えていた。
まずもって「天皇制継続」には何か深い意味があるとしか思えないのだ。

加藤はてっきりGHQは自分たちの母国と同じ「共和制」を強要してくると考えていた。
また、GHQ民政局長のヒューストンが言い残した数々の言葉も気になる。

「バイアスがない方が本質が見える」
「コピペは本質を捉えている」
「日本人は日本人」
「本質は変わらない。歴史は繰り返す」

加藤は考える。
「自らのバイアスを外して、日本の国家形態を改めて確認することから始める必要があるのでは無いか」

日本は大日本帝国憲法を発布したことにより、立憲君主国となった。
日本は天皇を君主とする君主制を採用している。
法律家としても超一流を自負している加藤は、そんなことは百も承知という感情と戦いながら、さらに確認を続ける。

君主は唯一であり、世襲制である。
しかも日本の皇室は万世一系である。
「え?」
加藤の思考が止まる。

「万世一系」

この言葉に極度の違和感を覚えた。
「万世一系」とは、永久に同一の系統が続くことである。
ということは、日本は有史以来、天皇を君主とする君主制の国家ということになる。

違和感はそこだ。
「遡ると徳川将軍家や織田、豊臣、足利将軍家、北条執権家、源氏、平氏、藤原氏と様々な政権や政治形態で遷移したが、これが全て天皇による君主制だったのか」

「いや違う」
中世以降、天皇が君主としての権限を行使して専制的な政治を行ったことは、あったとしても一瞬である。
現在の大日本帝国憲法においても、主権は天皇にある。立憲君主制となり君主の権限が制限されたが、プロイセンに習った憲法における天皇の権限は強力だった。
しかし、この敗戦は君主の専制的な行いの結果だったのか。

「本質は変わらない、歴史は繰り返す」
加藤の頭にこの言葉が浮かんだ。

有史以来、敗者にならなかったから万世一系は途絶えなかった。
また他国のように臣下に皇位を簒奪されることもなかった。

歴史を振り返ってみる。
歴史の転換期であった明治維新の時はどうであろう。
天皇は常に勝敗の枠外にいて、勝者が天皇に勝利の報告をした。
それ以前の騒乱においても同じである。
天皇は「玉」であり、「玉」を奉じたものが勝者となった。
また「玉」を簒奪することは「玉」を失うことを意味する。
臣下に皇位を簒奪されなかった理由である。

「待てよ」
加藤は、頭に電撃が落ちたような感触に陥る。
「この仕組みだと天皇は負けることが無い」
「なぜなら天皇自体が勝利の証だから」
それ故の万世一系であると加藤は確信した。

アメリカが天皇制を継続したい理由。
それは勝利の象徴を、この手に収めたいからである。
アメリカ以外の戦勝国は天皇制断絶に向け動いている。
「玉」を掲げることで、他国に対して、日本国民に対してもアドバンテージを持つことが可能となる。

直接対戦し辛酸を舐め、日本が「君民一体の国」であることの強さを思い知った国だからこそ知り得た日本の本質であり、「臣民一体」であることが当たり前の日本人には得難い感覚である。

「バイアスがない方が本質が見える」

日本人にとって天皇は日本人のアイデンティティであり象徴なのだ。
よって天皇制が継続されない国は日本とは呼べず、日本に勝ったとは言えない。
加藤は自分が日本人であることに、改めて誇りに思った。

次回は「欽定憲法」と「民定憲法」、そしてそれがどの様に「団塊の世代」と繋がっていくかを解説します。
<続く>


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