JTCはDXも生成AIもちょっと興味を持つけど「いらない」という人が多い件
はじめに
筆者は生命保険会社のデジタル共創オフィサーとして、社内のデジタル戦略や執行支援をする傍ら、顧客先やパートナー企業のDX支援、自治体向けのビジネス発想支援や官公庁のDX推進委員を務めており、日本全体のDX推進や人材育成のあり方を考える活動に携わっている。
その中で感じるのは、多くのJTC(日本の伝統的企業)で、DXや生成AIへの取り組みが一過性のブームに終わってしまう寂しさだ。せっかく導入したデジタルツールや生成AIが、JTC社員に十分に活用されないまま使われなくなってしまうことは本当に残念である。
DXや生成AIに興味を持っても、、、
JTC社員がDXや生成AIに関心をもってみたものの、しばらくして興味を失ったり、挫折したり、忘れてしまうケースにはいくつかある。良くあるのはDX人材育成のために会社からデジタルやDXの技術や事例のイーラーニングを必須化されるケースだ。難しいので良く分からず必要なコースを終わるとそれでDXも終了になって「全く役に立たない」と感じてしまう。DXは「知識を無理矢理頭に入れるもの」と理解してしまうのだ。
生成AI導入の場合は、生成AIやプロンプトがよくわからないまま始めてしまい、うまく活用できずに挫折する。生成AIやデータ分析のような新しいツールや手法には学習コストがつきものだが、業務に追われる中でそれに割ける時間を確保できないのにDX推進部門から「勉強してください」とトレースされるので嫌な思いだけが残る。
もっと本質的な問題はDXをイーラーニングで学習したり、生成AIを導入しても、すぐに業務効率化や生産性向上の効果が実感できないと、モチベーションを維持できずに使わなくなってしまうケースだ。これは、ツールの問題だけでなく、組織体制や業務プロセスそのものを見直す必要性がある。
社内の風土や文化がデジタル化や革新的なアプローチを受け入れるのに時間がかかるというJTCの特性が定着を妨げる。長年にわたって築かれてきた組織の慣性を変えるのは容易ではない。トップダウンの強力な推進力と、ボトムアップの地道な浸透活動の両方が必要である。
これらの課題を丁寧に解決していかないとJTC社員がDXや生成AIを継続的に活用するのは難しい。では、どのような工夫が必要か。
社員に継続的に使ってもらうための工夫
JTC社員にDXを定着させたり生成AIを継続的に使ってもらうためには、十分な教育と研修を提供し、ツールの使い方や活用事例を丁寧に説明することが大切だ。単に操作方法を教えるだけでなく、それがどのように業務改善につながるのか、具体的なユースケースを示すことが重要である。
社内に業務でDXを活かせる本当のデジタル人材を育成し、各部署での推進役となってもらうのが効果的だ。デジタルに詳しい社員が身近にいることで、気軽に相談できる環境ができ、DXの勉強や生成AIなどツールの活用が進みやすくなる。
業務プロセスそのものを見直し、DXや生成AIを活用しやすい環境を整備することも欠かせない。単にツールを導入するだけでなく、業務のやり方自体を変革していく必要がある。無駄な作業を削減し、デジタルならではの効率化を図ることで、社員の負担を減らしつつ、生産性を高めていくことができる。
そのためには、トップダウンで明確なビジョンを示し、全社的な取り組みとして位置づけることが重要だ。経営層がデジタル化の重要性を認識し、強いリーダーシップを発揮することで、社員のマインドセットも変わっていく。デジタル化を推進することが、会社の将来を左右する戦略的な意思決定であることを、全社員が理解する必要がある。
小さな成功体験を積み重ねることも重要だ。DXツールや生成AIを活用して、少しずつでも業務効率化や生産性向上の成果を上げ、その事例を社内で共有していく。それによって、社員のモチベーションを高め、デジタル化への理解と共感を広げていくことができる。
まとめ
JTC社員がDXに取り組み、デジタルツールや生成AIを継続的に活用していくためには、教育と研修、業務プロセスの見直し、トップのリーダーシップ、小さな成功体験の共有などのアプローチが必要だ。地道な努力を重ねることで、デジタル化を企業文化として根付かせることができる。
そのためには、社員一人一人がデジタル化の意義を理解し、前向きに取り組む姿勢を持つことが何より大切だ。自分の仕事やキャリアにとって、デジタル化がどのような意味を持つのか、真剣に考えることが必要だ。