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JTCの新規事業担当者が「上から」になってしまうメカニズムと改善策

はじめに

筆者はJTC生命保険会社の「デジタル共創オフィサー」として、社内のデジタル戦略や執行支援をする傍ら、スタートアップの顧問やパートナー企業のDX支援、自治体向けのビジネス発想支援、官公庁のDX推進委員などを務め、日本全体のDX推進や人材育成のあり方を考える活動に携わっている。

近年、オープンイノベーションの流れから、JTC(日本の伝統的大企業)とスタートアップの接点が増えているが、JTCの新規事業担当による「上から態度」で、うまく協業に結びつかないケースが多い。

本来、JTCの社員は新規ビジネスにめっぽう弱い。だから新規事業について「しっかり謙虚に学ぶ」こと、「自分ごととしてスタートアップのビジネスを考える」ことが必要だ。しかし、多くのJTCの社員はスタートアップに対し自分や会社の都合を押し付けたり、「上から」目線になってしまうことも多い。

本稿では、JTCの新規事業担当がやってしまう「上から」が何故起きてしまうのかについてスタートアップとwin-winの関係を築くための方法も含めて論じたい。

新規事業担当が「上から」になるメカニズム

JTCの新規事業担当が任命され、新任でミートアップ(企業とスタートアップの人的交流イベント)に参加するようになると、最初はスタートアップ側の熱量や知識量、ビジネスセンスに圧倒され、場違いな自分に自信をなくすことが多い。

「自分はビジネスが全然分かっていない」「人脈がない」「誰からも相手にされない」「人がひっきりなしに挨拶にくるあの人は凄い、誰?」という状態で「アウェー感満載」時期である。

その後、ミートアップに参加し続けていると次第に顔馴染みが増える。何回も懇親会で話をしたり、業界の著名人を紹介されたり、集合写真がSNSに多く流れるようになると、人脈が増えてSNSの友達数として視覚化される。

これが自信になり、ミートアップの常連になり、人脈拡大局面を迎える。こうなるとアウェー感満載からホーム感満載となる。この頃から自分の力やブランド力を過信し始め、態度が変わってくる。服装や髪型、お酒や料理の好みも変化する。

これを繰り返すと、JTCの新規事業担当(特にCVCファンド、資金提供判断に携わる人)の元にはスタートアップの人間が近づいて来るようになり、「今度飲みましょう!」「この前は美味しかったですね」な会話が多くなる。

こうなると新規事業担当は会社のブランド力や友人のブランド力を自分自身のそれと勘違いするケースが多くなる。この流れが「上から」になってしまうメカニズムである。

JTCの「上から」をスタートアップが嫌う

JTCの新規事業担当は、自社の資金力や営業力、ブランド力を過信しがちだ。「うちが出そうか?」「アイデアはいいけどスケールするかな?」といった発言がでる。だが、そんな態度がスタートアップは大嫌いだ。

彼、彼女らがJTCに求めているのは、対等なパートナーシップである。自分たちの技術やアイデアを尊重し、共に新しい価値を生み出そうとする姿勢だ。「金出そうか?」ではなく「力を借りたい」と言ってくれるJTCこそ、スタートアップは協業相手に選ぶ。

加えて、スタートアップのスピード感についていけないJTCも嫌われる。「意思決定に時間がかかる」「各部署の稟議を通さないと」などと言っては、スタートアップのやる気を削ぐ。スタートアップが組みたいのは、機動力があり、スピーディに動けるJTCだ。

スタートアップの文化を理解しようとしないJTCも嫌われる。「スタートアップは行儀が悪い」「ルールを守れ」などと言っては、イノベーティブな発想を阻害してしまう。型破りなアイデアを尊重し、失敗を恐れずにチャレンジする社風に共感できるJTCでないと、スタートアップとの協業はうまくいかない。

謙虚に学び、対等に向き合う

スタートアップと良い協業をするためにJTCの新規事業担当はどのような心構えが必要だろうか。何より大切なのは、スタートアップに謙虚に学ぼうとする姿勢だ。スタートアップの斬新な発想や行動力に感化されるくらいの気持ちがなければ、本当の意味での協業は生まれない。勘違い担当者はJTCの役員などの役職者がしっかり注意して指導しなければならない。

スタートアップとの良好な関係を築くには、単に自社に有利な条件を引き出そうとするのではなく、相手の立場に立って考える姿勢が欠かせない。「うちにとってのメリットは?」ではなく「両者の成長にどう貢献できるか?」を考えるべきだ。

まとめ

JTCの新規事業担当のスタートアップとの関係で陥りがちな問題について論じてきた。「上から」な態度や、スピード感・柔軟性の欠如は、スタートアップとの協業を阻む大きな障壁となる。JTC側は、スタートアップに謙虚に学び、対等なパートナーシップを築こうとする姿勢が何より大切だ。

JTCがイノベーションを加速するには、スタートアップの力が不可欠だ。スタートアップと真摯に向き合い、互いの強みを活かし合える関係を築いていくことが、日本の産業の発展につながるはずだ。JTCの新規事業担当には、そのために必要なマインドと能力を磨くべきである。

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