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【エッセィ】蛙鳴雀躁No.42<タカラヅカ>
10月16日15:30 花組公演観劇
ファンタジー・ホラロマン「エンジェリック・ライ」
作・演出 谷 貴也
芝居の終わった休憩時間に、元シナリオライターのヅカトモは開口一番、「作者はたのしくてたまらない気分で、書いたと思う」と言った。もう一人のヅカトモは、「舞台装置と衣裳がきれいやった!」。
ひとこちゃん(永久輝せあ様)とみさきちゃん(星空美咲様)の大劇場お披露目公演、おめでとうございます。ショーの主題歌にあるように新しい日がはじまろうとしています。
ホラーロマンではなく、ホラロマンと銘打った嘘つきの天使役にひとこちゃんはぴったり。立ち姿が美しく、軽妙で、洒脱な反面、繊細な一面も持ち合わせる役柄は、ひとこちゃんそのものに見える。
白を基調にした衣裳も美形のひとこちゃんをさらに際立たせた。
パンフレットにも、「天使ものをやるならこの人」と谷先生も書いておられる。
水を得た魚ならぬ破天荒のエンジェル。役名のアザエルは、ダビテの率いる戦士の中でも、足が速いことで知られていたアサエルからとられたのかと想像すると、余計にたのしくなる。
アンチヒーローに対抗する悪魔役の聖乃あすかくん。闇属性がお気にいりの私は、黒と赤の混在した衣裳と逆立つ赤毛、禍々しいメークに目が釘づけになる。
トップ娘役のみさきちゃんは、オペラ歌手かと思うほど、高音の歌声が傑出している。
天界と現世と地獄の概念を、祝祭劇にできるのはもしかすると日本人だけかもしれない。谷先生ご自身も、「信心はあれど信仰心はない、多くの日本人と同じ私は、空のむこうに別世界や天使達を妄想してしまう」と書いておられる。映像では体感できない美しい世界観に酔いしれました。
レヴュー・グロリア「ジュビリー」作・演出 稲葉大地
稲葉先生のショーはいつものようにこれでもかこれでもかというくらい群舞の嵐。今回は、主題歌以外は、ほぼクラッシック音楽で構成されていたので、重厚感が増した。中でも男役の群舞が圧巻だった。
ひとこちゃん一人、黒のスーツで、他の男役は赤のスーツ。
エプロンステージでずらりと勢揃いすると、これぞタカラヅカ! 目の保養でした。新たな若き王と王妃の即位を思わせる場面もあり、稲葉先生ならではの華やかさの中にも時のうつろいを感じさせられる一瞬一瞬。時よとまれと思ったのは私一人ではないはず。
今回の公演で退団する専科の凪七瑠海様。最後までファンに気遣いを見せる姿勢に感激した。私の前の席のお二人はあきらかにルミさんのファンだとわかった。客席降りで、ルミさんが近くにきたとき、私と同年輩の女性は大きく手を振った。あなたはそれに気づいて目に止め、素敵な笑顔を返した。二人はキャアと歓声をあげた。
タカラヅカが息を吹き返す時を待って去る決意をしたと思うと、胸が熱くなる。去っていく生徒さんには感謝しかない。
もはや跡形もない四千人収容の旧大劇場を思い出す。平日は空席が目立ち、風呂屋のタイルのモザイクか、映画の看板かと見紛う書き割りをしばしば目にした。衣裳も使い回しが多かった。群舞の子たちの衣裳はペラペラだった。
よくぞ、110年持ちこたえた。
書き割りや衣裳をものともしない名作を生み出した諸先生とそれを体現したあまたのスターがいたからだと思う。
エルガーの「威風堂堂」での、燕尾服のフィナーレ。圧巻でした。
ヅカトモ三人で夜ゴハンを食べ、「ウサ晴らしになった」と言い合って帰途についた。