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#毎週ショートショートnote 接吻代行[裏お題] ヨン様接吻代行屋
日本のおば様方が冬のソナタに骨抜きにされた平成十五年、僕は就職難の真っ只中にいた。さして取り柄のない僕は、母の一言で人生が一変した。
「春樹、あんた女の腐ったような顔だねと諦めてたけど、来たよ!時代が、あんたヨン様に目が似てるよ!」
僕は、てめぇの生んだ子になんて言い草だ!とムッとしたが、ヨン様に似ているとは…、いいじゃないか…、
さらに母は調子づいて、髪はこうだ、めがねをかけろ、マフラーを巻けだのうるさく注文を付けた。
「やっぱり、わたしの目に狂いはなかったね」母は満足そうに言った
「就職試験、ヨン様で行きな!」
母の予感は的中し、女性試験官の目をハートにし、女子事務員の憧れの的となった。しかし運もそこまで、冬ソナブームも下火になり、男子社員のいじめもあって、職を転々とする羽目に、気がつけば、令和、もう既におっさんである。年末紅白歌合戦をぼんやり見ていると同年ぐらいであろうか、純烈がおば様方の黄色い声援の中で色気を振り撒いていた。かつての僕だ…、
夢をもう一度、今度は僕が閃いた!
「ねぇ~、純烈って温泉センター回って火がついたんだろ、僕もヨン様の格好で、ヨン様接吻代行屋、おねだり接吻、冬のロマンスで温泉地回ろうかな、ねぇー聞いてる母さん?」
母は、おせちを作りながら呟いた
「そりゃー、あれだ、冬のロマンス詐欺だね」
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