#シロクマ文芸部 北風とプロペラ
北風と岩壁を叩く波しぶきを感じながら半島へつづく県道を車で走らせていると突然巨大な建造物が現れる。
「わぁ」と声が漏れるほどの巨大な白い羽根、風力発電にであう。
島に渡る橋を抜け、対岸を眺めると半島に沿うように風力発電の白いプロペラが何基も立っていた。
垂直に立つタワーは70㍍羽の径は50㍍に達する。近づいてみると羽根を回すモーターが不気味な唸りをあげ、まるで宇宙からの侵略者のように立ちはだかっていた。さらに半島の斜面を登っていくと、かつてはミカン山であったのか高齢化で作られなくなり荒れ果てた山の斜面には太陽光発電のパネルが張り巡らされ陽に照らされギラギラと波間を照り返していた。
かつては、弘法大師がこの地を訪れあまりの絶景に、筆を投げたと言い伝えられる程の美しいこの土地に何があったのか
国の自然エネルギー政策によりありとあらゆる地でこの様な光景を目にする。核家族化が進み若者は代々受け継いできた土地を捨て街へと出て行く。
残された年老いた親たちは古びた家にひっそりと暮らす。やがて放棄地はいくばくかの金で売られこの様な光景が広がってしまった。
クリスマス、都会では街路樹にイルミネーションが施され、光に溢れ、人で通りが埋め尽くされている一方で、真っ暗な県道を抜け薄暗い家に細ぼそと暮らしているこの地から、送電線をつたい電気が送られていることをどれ位の人が知っているのだろうか。
羽根が回りモーターで電気を作る時にでる低周波被害、電磁波、摩擦で起こる火事または破損色々な問題を抱えて果たして民間の会社が何十年も維持していけるのだろうか。
太陽光発電もしかり、数年もすれば破損、劣化していく大量のパネルをどこに廃棄するのだろうか。
もしそのまま放置すればパネルの中の有害物質が土地にしみ出しやがては海へ流れ大きな環境破壊に繋がるのではないのか。
エジソンが京都の竹でフィラメントを発明し白熱電球が生まれ世の中は1個の裸電球の明るさに歓喜した。
電気が発明されて以来、私達の暮らしは劇的な変化を遂げてきた反面、どこか間違った方向に向かっているような気がしてならない。
北風からもたらす恩恵を無駄にしないためにも、これからの子ども達に負の財産を残さないようしっかり今、議論し対策を考える必要があると思う。
かつては美しい海岸線だったこの場所を一部の私利私欲を貪る人達のゴミ捨て場にすることは許されない。
終わり