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#毎週ショートショートnote 月夜の寝ぐせは鬼の角

昔の話じゃ この村には言伝えがあってじゃな、年に一度、御山のてっぺんに満月の掛かる夜は御山に住まう鬼が里に下り来て人間の子どもを山にさろうて、鬼の子として育てるそうじゃ。
親はさらわれては大変と、飯を突いて糊にし、子どもの髪の毛に塗り角を作ったんじゃ
こうすると鬼の子と勘違いしてさらわれんのじゃと
子どもは嫌がったが、尻引っ叩いて無理やり親は寝ぐせを付けたそうじゃ

月夜の晩ごうごうと地鳴りがして表の戸を揺らした。
父(とと)は、いよいよ来たかと震えながらも身構えておった。
すると節穴から、赤く血走った目がギョロリ
ととはおもわず「ヒィー」と叫びそうになった時、一番末のトキオが布団の中からゴソゴソと這い出てきた。
しまった!トキオの頭に糊を付けて角を作るのを忘れとった!
ととは大変な形相で、余った糊を自分の顔に塗り込み囲炉裏の灰をかぶり鎌を二本頭に結わえ、入ってきた鬼の前に立ち塞がり 髪振り乱して
「がぁおぉー、山さ、かえれぇー」


その顔の恐ろしかったこと
流石の鬼もすっ飛んで帰って行ったんじゃと
それからじゃ
なまはげが里の家々を回って
「ゆうこときかね子いねえかぁ」って回り始めたんじや
鬼にさらわれんように、ととが化けたんじゃ
今も昔も、ととは強しじゃな

とっぴんからりん
おしめぇ

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